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クローン病

 

         クローン病の特徴 

クローン病は潰瘍性大腸炎とともに炎症性腸疾患の一つですが、潰瘍性大腸炎とは異なり、炎症が腸壁全層(粘膜・粘膜下層から筋層、漿膜)に及び、非連続性の”スキップ病変”を呈する特徴があります。
 好発年齢は10歳代後半から30歳代前半で、主症状は潰瘍性大腸炎が粘血便であるのに対し、クローン病では腹痛、下痢、血便に加え、発熱、体重減少、痔瘻、口腔アフタなど全身におよぶ症状を呈します。
 クローン病の合併症は穿孔、瘻孔形成、狭窄、膿瘍などの消化管に関連する合併症と、眼、肝、膵、腎、肛門周囲、筋骨格、皮膚粘膜などの消化管以外の合併症があります。

 

         クローン病の診断

クローン病の診断には血液・便検査、超音波検査、消化管造影、内視鏡検査などが行われます。

 

1.血液・便検査

 慢性炎症の結果、血沈の亢進、CRP(炎症反応)の上昇、貧血などがみられます。栄養状態が悪化すると血清タンパク、アルブミン、総コレステロール、コリンエステラーゼ値などが低下します。便検査では便潜血の有無を知るために、また便培養は感染性腸炎との鑑別のために必要となります。

 

2.超音波検査

 超音波検査のみでクローン病を診断することは困難ですが、クローン病では特徴的な超音波所見が得られます。病変部の腸管は全層性かつ非連続性に低エコー性壁肥厚として描出されます。活動期では腸管の層構造が不明瞭になり、浮腫性の肥厚を認めます。

 

3.消化管造影

 上部消化管造影と注腸造影を行い、小腸および大腸病変の有無を検索します。病変は区域性、非連続性に認められ、小腸の病変は回腸末端から回腸下部に多く認められます。縦走潰瘍、敷石像、非連続性病変、内瘻・外瘻、非対称性狭窄、裂溝のある深い棘状バリウム突出像、多発性アフタ様潰瘍、炎症性ポリープの密生などが特徴的な所見です。

 

4.内視鏡検査

 内視鏡検査では正常粘膜に囲まれた非出血性の潰瘍を認め、周囲粘膜には炎症を欠き、非連続性の多発潰瘍となります。腸管の縦方向に配列して大きいものは縦走潰瘍となり、敷石像をともなうなどの特徴があります。

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小腸(回腸)の敷石像

 

 

 

 

敷石像の頂部や潰瘍辺縁から生検を施行すると、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫、非連続性病変、不均衡炎症(粘膜より粘膜下層の炎症が強い)などの所見が確認されます。

 

5.診断基準

日本消化器病学会クローン病診療ガイドラインが用いられます。

表 クローン病の診断基準

1.主要所見

A.縦走潰瘍

B.敷石像

C.非乾酪性類上皮細胞肉芽腫

2.副所見

a.縦列する不整形潰瘍またはアフタ

b.上部消化管と下部消化管の両者に認められる不整形潰瘍またはアフタ

3.確診例

1AまたはBを有し虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎が除外されるもの

2Caまたはbを有するもの

4.疑診例

1aまたはbを有するもの

2Cのみを有するもの

3AまたはBを有するが虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎を除外できないもの

注)日本消化器病学会クローン病診療ガイドラインを一部改変。

 

6.活動性・重症度の評価

 小児クローン病の活動性・重症度の評価には小児クローン病活動性指標(PCDAI)、IOIBD 評価スコアなどが用いられます。
 小児クローン病治療指針案では、完全中心静脈栄養の適応となる“病勢の重篤な場合”として、腸管狭窄や腸閉塞で経腸栄養が困難な場合、消化管出血が持続する場合、高度の肛門病変、瘻孔、膿瘍形成がある場合、著しい栄養障害がある場合、頻回の下痢を認める場合などが挙げられています。

 

         小児クローン病の治療

 クローン病の治療は炎症を抑えて栄養状態の改善をはかる内科的治療が主となります。特に小児のクローン病ではステロイド治療、食欲低下、栄養吸収障害、代謝亢進、蛋白・電解質の漏出、炎症性サイトカインの影響などにより重篤な成長障害をきたすことがあるので、積極的な内科的治療が必要となります。
 腸管の狭窄や瘻孔形成がある場合には手術の対象となり、腸切除術や腸管形成術が行われますが、一般に再発率が高く難治です。

 

1.栄養療法

 成分栄養剤や高カロリー輸液が用いられます。栄養療法は腸管の安静を保ち栄養状態の改善を図るのに効果があり、腸管内食事抗原の除去や低脂肪は免疫異常の是正にも効果があると考えられています。栄養療法の原則は十分量(~維持量の1.5倍)の蛋白質とエネルギーの摂取、乳糖の制限、食物繊維の制限、ビタミン・微量元素の補充、脂肪制限です。治療効果がみられたら半消化態栄養剤から低残渣食、普通食へと段階的に移行します。

 

2.薬物療法

薬物療法としてはステロイド[プレドニゾロン(プレドニン®]、メサラジン(ペンタサ®)、サラゾスルファピリジン(SASP)(サラゾピリン®)、アザチオプリン(イムラン®)、6-MP(ロイケリン®)、メトロニダゾール(フラジール®)、インフリキシマブ(レミケード®)などが用いられます。
 ステロイドは寛解導入に用いられますが、成長障害の原因になるので寛解が得られた後は減量、中止します。ステロイド減量後の維持療法薬としてはメサラジン、SASPが用いられます。
 アザチオプリン、6-MPなどの免疫抑制薬はステロイドの効かない無効例や、ステロイドから離脱できないステロイド依存例に対して用いられます。いずれも速効性が乏しく、使用開始後36カ月を経て効果が認められます。膵炎と骨髄抑制などの副作用があります。
 メトロニダゾールは肛門病変に有効とされています。
 インフリキシマブは炎症を抑える効果を期待し開発された薬剤(ヒト型化キメラ抗TNF-α抗体)です。クローン病の寛解導入、維持療法に用いられますが、重篤な感染症を引き起こす可能性があります。小児では栄養療法、ステロイド、免疫抑制薬などにより十分な効果が得られない場合に用いることがありますが、小児での副作用や寛解維持の方法などいまだ未解決の問題があります。

 

3.外科療法

 腸管の狭窄、閉塞の他、瘻孔形成、膿瘍、穿孔、出血などに対して手術が行われます。成人では消化器がん合併例の手術も増加しています。直腸肛門病変では難治性痔瘻、直腸肛門狭窄、直腸膣瘻などが手術の対象となります。小児ではこれらの病変が栄養障害や成長障害の原因となっている場合には、思春期発来前(女児では9歳、男児では11歳頃)に手術を行い、低身長を残さないようにする必要があります。
 手術は、病変部の腸切除が必要な場合には肉眼的病変部のみの小範囲切除とします。吻合法は機能的端々吻合法が再狭窄をきたしにくいとされていますが、どのような吻合法を用いても再発による再手術率が高いのも事実です。
 腸管の狭窄に対しては、腸管形成術と腸切除術を併用してなるべく腸を残すことが原則で、狭窄形成術、バイパス手術などが行われます。狭窄範囲が短い場合には内視鏡的バルーン拡張術も行われますが、穿孔などの偶発症や再狭窄に対する注意が必要です。
 難治性の直腸肛門病変、特に痔瘻に対しては肛門機能を温存するシートン法が一般的です。骨盤直腸窩痔瘻、著しい直腸肛門狭窄、排液量の多い直腸膣瘻などでは人工肛門造設術が必要となります。

Last Update 2013/10/16