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そけいヘルニア(鼠径ヘルニア)は小児外科で扱うことの最も多い疾患です。
腹膜の袋(腹膜鞘状突起、ふくまくしょうじょうとっき)に腸管や卵巣が脱出し、そけい部がふくらみます。


右側の腹膜鞘状突起が残っているためそけいヘルニアの原因となる
脱出した腸管や卵巣が戻らなくなる嵌頓(かんとん)をおこすことがあるので、そけいヘルニアと診断されたら手術が必要です。

そけいヘルニアの嵌頓(かんとん)

脱出した腸管がむくんでもどらなくなり、放置すると腸管が壊死をおこす

男児そけいヘルニアの嵌頓:そけい部から陰のうにかけて硬くしこり、陰のうは赤みを帯びている
女児そけいヘルニアの嵌頓:卵巣が出てもどらない
手術の時期は施設により若干の差がありますが、嵌頓の危険を避けるためなるべく早めの手術が必要です。

そけいヘルニアの手術

腹膜鞘状突起の根もとを二重にしばり、腸管や卵巣が出ないようにする


獨協医科大学越谷病院小児外科では生後3カ月以降を目安に手術を行っています。もちろん嵌頓の危険を考慮してそれ以前に手術を行うこともあります。
そけいヘルニア手術の実際

                           
小さな創のそけいヘルニア手術

現在、当院では小さな創(1 cm未満)でそけいヘルニアの手術を行っています。
通常の半分以下の創の長さで手術が可能です。

創は片側の場合は一か所、両側の場合は二か所ですが、腹腔鏡などの特殊な器具は用いません。

以下は、小児外科の学会(2007年5月)で発表した内容の一部です。
 

ヘルニアの袋を開いたところ
袋の根元を二重にしばりヘルニアを治す

1 cm未満の創で手術ができる


・ 96%の手術で 1cm未満の創による手術が可能
・ 実際の創の長さは5.5mmから9.5mm
・ 男児の方が女児よりも1mm程度、創が長くなる
・ 手術時間は従来の手術と変わらない
・ 合併症や再発は認めていない
・ ヘルニアの袋が大きい、あるいは厚く肥厚している、また皮下脂肪が厚いなどの
  場合には小さな創による手術が難しいことがある

小児そけいヘルニアの対側発症対側検索

そけいヘルニアの手術を行なった後、しばらくして反対側のそけいヘルニアがでることを対側発症といいます。
多くは1年以内におこりますが、10年以上経った後にでることもあります。
対側発症の頻度は5%から10%、つまり片側の手術をうけたこどもの10人に1人、または20人に1人が反対側の手術をもう一度、受けなければならないことになります。

対側発症により二度の手術を受けなければならないことを避けるため、手術の際に反対側も調べ、腹膜鞘状突起が閉じていなければ反対側も同時に手術をしてしまうという方法があります。これを対側検索といいます。


腹腔鏡を使った対側検索


対側検索の問題点:

1)腹膜鞘状突起が閉じないで残っていても必ずしもそけいヘルニアがでるとはかぎりません。対側検索を行なうと50%から60%位の頻度で腹膜鞘状突起が閉じずに残っていると確認されます。しかし、このうち実際にそけいヘルニアの症状がでるのは1/5から1/10程度です。
2)左側のそけいヘルニアと親や兄弟にそけいヘルニアがあった場合には対側発症を起こしやすいことがわかっています。しかし、それでも対側発症の可能性はせいぜい10%から15%程度です。また、腹膜鞘状突起をじかに観察しても将来、そけいヘルニアがでるかどうかの予測は困難です。したがって、対側発症の可能性の高いこどもだけに対側検索や対側の処置を行うというのもなかなか困難です。


獨協医科大学越谷病院小児外科ではそけいヘルニアの対側検索は心臓や肺などの疾患があったり、神経系などの重篤な障害のため二度の麻酔や手術を避けたいと考えられる場合には有効な方法と考えています。
短編「パンツマンのうた」:そけいヘルニアを題材とした創作です。
そけいヘルニアの理解に役立つかもしれません。
水瘤(精索水瘤、精巣水瘤)は腹膜の袋(腹膜鞘状突起)のなかにお腹から降りてきた水がたまった状態で、以前は陰のう水腫と呼ばれました。

ヘルニアと同じ腹膜の袋が原因ですが、水瘤の場合には嵌頓のような危険はないので急いで手術をする必要はありません。
1歳までに9割が自然に消失しますので、1歳をすぎても残っている場合に手術の対象となります。

以前は水瘤に針を刺して水を抜くことが治療として行われたことがあります。
しかし、これはこどもに苦痛を与えるだけでなく、その効果は一時的で根本的な治療ではありません。

そけいヘルニアと水瘤の区別が場合によっては難しいことがあります。
小児外科医による診察をお受けになることをお勧めします。



そけいヘルニア手術の歴史:

前金沢医科大学小児外科教授・梶本照穂氏によると明治44年、八代豊雄が順天堂醫事研究会誌に「小児鼠蹊(そけい)ヘルニアノ療法ニ就テ」という論文を寄せ次のように記載しているという。
「手術ハ成ル可乳児ノ内即チ1歳以下然カモヘルニアヲ見付ケタラ直チニ之レヲ施スガ善イ」(手術はなるべく乳児のうち、つまり1歳以下でしかもヘルニアを見つけたら直ぐに手術をするほうがよい)
また手術の方法について、
「-----法ノ如キ複雑ナ術式ヲ用ユルハ却ッテ有害デアリマス。繊弱ナル精系ヲ損傷セナイ様ニ注意シツツ囊ヲ剥離シ、其頚部ヲ高ク結紮シテ切断シ、(中略)ノミデ充分デアルト信シマス」(-----法のような複雑な術式を用いるのはかえって有害である。細くて弱い精管を傷つけないように注意しながらヘルニア囊を剥離し、高位で結紮し切 離する、(中略)だけで充分と信じる)
これは成人のそけいヘルニアに対するような複雑な手術は必要なく、小児ではヘルニアのふくろを根元でしばるだけで充分であることを指摘したもので、またその際に精管(精液を通す管)を傷つけないように注意すべきことを述べたものである。
梶本教授は八代論文についてこう結んでいる。
「そして術後の安静は不要と言っている。(中略)米国・英国でさえ、この時期、これだけのことを述べた人はいない。現在、話題となり課題になっていることはほとんど言い尽くされているというのは大きなおどろきである。今、これに何をつけ加えよ、というのであろうか。筆者は、日本の小児のそけいヘルニアの論文の中でもっとも誇るべきもののひとつであると考えている。」

参考文献:
1. 八代豊雄:小児鼠蹊ヘルニアノ療法ニ就テ。順天堂醫事研究会誌、457:1-10.
2. 梶本照穂:明治・大正・昭和前半期の小児の外科。日小外会誌、35:1-10,1999.

3. Ikeda H:Minimally invasire repair of inguinal hernisa in children. In Eiras JR(ed):Hernias:Types,Symptoms and Treatment,Nava Science Publishers,Inc,Hauppauge,NY,pp1-29,2011(医療関係者向け、英文)
Last Update 2013/10/16