神経芽腫

ホーム
基本情報・アクセスなど
HP最新情報
小児外科について
医師の紹介
診療
診療実績
手術の映像
教育プログラムと活動
研究・業績
話題・トピックス
リンク
プライバシーポリシー


  • 神経芽腫は副腎交感神経節に発生する腫瘍です。多くは5歳以下のこどもに発生しますが、稀に5歳をすぎて発症したり、また生まれたばかりのあかちゃんに発見されることもあります。
     
  • 副腎と交感神経節は胎児期の神経堤(しんけいてい)と呼ばれる共通の組織から発生するので、神経堤由来の細胞が神経芽腫の発生母地と考えられています。
     
  • 神経芽腫は発症した年齢により特徴的な症状や悪性度、治療に対する反応などが異なります。

  • 乳児早期(生後3カ月ころまで)の神経芽腫

     
    一般に乳児早期(生後3カ月ころまで)の神経芽腫、特に病期(ステージ)4Sに分類される神経芽腫は自然に消失(自然退縮)する傾向があり、腫瘍の増大・圧迫による呼吸障害や腎障害をおこしやすい時期をのりきると治癒させることが可能です。

    腫瘍の大きな時期をのりきるため必要最小限の治療(手術、化学療法、放射線療法など)が行われます。

     

    生後1カ月

    肝転移のためお腹は大きくふくれている

       
    左副腎の神経芽腫で肝に多数の転移をともなっている

    手術、化学療法、放射線療法を組み合わせた治療により治癒

 


  • "History"


    病期(ステージ)4Sの神経芽腫と自然退縮:

    1901年、米国のDr Pepperは肝臓に転移した副腎腫瘍で苦しむ生後1カ月の女児例を学会誌に報告した。この女児は残念ながら救命されなかったが、それから70年後の1971年、同じ米国のDr Evansは肝、皮膚、骨髄などに転移があってもわずかな治療で救命しうる神経芽腫を”特別な(special)”という意味の”S”をつけて病期(ステージ)4Sの神経芽腫とよぶことを提唱した。
    一般にがんの領域では転移していることは結果が不良であることを意味する。しかし、病期4Sの神経芽腫ではある時期をすぎると腫瘍も転移も自然に消えていく 自然退縮のおこることがしばしば経験されていた。

    この自然退縮の理由は長いこと不明とされ、神経芽腫は”enigmatic(不可思議)な腫瘍”と言われてきた。

    近年、自然退縮のなぞを解く一つの鍵としてアポトーシス(apoptosis)が注目され、その分子生物学的なメカニズムの研究が行われている。アポトーシスとは”プログラムされた細胞死”のことを意味し、ヒトの組織の発生や分化にはこのアポトーシスが深く関与していることが知られている。例えば、神経芽腫の発生母地となる神経系の発生段階では一時、数多くの神経細胞がつくられ、この中から 複数の神経細胞がアポトーシスによりぬけ落ちることにより最終的な神経系のネットワークが形成される。
    すなわち、自然退縮する神経芽腫ではこのアポトーシスの機序が温存されており、アポトーシスにより腫瘍細胞が消え、腫瘍自体も消失すると考えられるようになった。
    しかし、アポトーシスとは直接に関係のない細胞死のメカニズムにより自然退縮がおこるとのデータもあり、神経芽腫の自然退縮の真のメカニズムは未だ不明のままである。

    参考文献:

    1. Pepper W: A study of congenital sarcoma of the liver and suprarenal. Am J Med Sci 121:287-299,1901.
    2. Evans AE, et al: A proposed staging for children with neuroblastoma. Cancer 27:374-378,1971.
    3. Nakagawara A, et al: High levels of expression and nuclear localization of interleukin-1 beta converting enzyme (ICE) and CPP32 in favorable human neuroblastomas. Cancer Res 57:4578-4584,1997.
    4. Kitanaka C, et al: Increased Ras expression and caspase-independent neuroblastoma cell death: possible mechanism of spontaneous neuroblastoma regression. J Natl Cancer Inst 94:358-368,2002.

  • マス・スクリーニング(生後6カ月)で発見される神経芽腫

    約8割の神経芽腫はカテコールアミン(ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどの物質)を産生し、その代謝産物が尿中にVMA、HVAと呼ばれる物質となり排泄されます。
    このVMA、HVAを調べて神経芽腫を早期に発見しようというのが神経芽腫のマス・スクリーニングです。
    2004年3月まで、生後6カ月の乳児を対象にマス・スクリーニングが実施され、全国で9割以上のあかちゃんがこのマス・スクリーニングを受け、約5,000人に1人の割合で神経芽腫が発見され ました。

    2004年4月、神経芽腫のマス・スクリーニングは中止になりました。ただし、VMA、HVAの検査を希望 される方は個別に医療機関を受診すれば検査を受けることができます。)

     
    右上腹部にこぶし大のしこりを触れる
       
    右副腎の神経芽腫

    手術により摘出し治癒

     

    マス・スクリーニングが全国的に実施されるようになった1985年以降、1歳未満の神経芽腫が顕著に増加しました。一方、マス・スクリーニングの効果として期待されている1歳以降の神経芽腫が減ったかどうかに関しては統計のとり方により結果が一致せず、不確かです。

    以上の統計学的なデータからマス・スクリーニングで発見される神経芽腫の大部分は自然に消失(退縮)するか、あるいはそのまま良性の腫瘍として大きくならない腫瘍と考えられるようになりました。
    一方、1歳未満で発見される神経芽腫の中にもわずか(2-3%)ながらがん遺伝子の増えた神経芽腫が含まれていることも知られています。

    このような状況から神経芽腫を扱う施設の中にはマス・スクリーニングで発見された神経芽腫を無治療で経過観察し、消失しなかったりあるいは大きくなる場合に治療を行 った施設もあります。
    一方、神経芽腫を抱えたまま無治療で経過観察することの心理的負担や発見された腫瘍が悪性度の高い神経芽腫である可能性が否定できないことを考慮して、手術や化学療法を積極的に行っ た施設もあります。

    神経芽腫マス・スクリーニングの功罪とこれに対する考え方は全国紙の紙上にも発表いたしました。参照

     

    参考文献:

    1. Yamamoto K, et al: Marginal decrease in mortality and marked increase in incidence as a result of neuroblastoma screening at 6 months of age: cohort study in seven prefectures in Japan. J Clin Oncol 20:1209-1214,2002.

  • 1歳以降の神経芽腫

    1歳以降に発症する神経芽腫では一般に進行していることが多く、手術や化学療法、放射線療法を組み合わせた強力な治療が必要となります。
    特に病期4の場合やがん遺伝子N-myc(エヌミックと呼ばれる)が増えている場合には、造血幹細胞移植(骨髄移植や末梢血幹細胞移植など)を用いた積極的な治療が行われます。

    1歳以降に発症した病期4の神経芽腫の場合、造血幹細胞移植を併用した積極的な治療をおこなっても5年後の生存率は30%程度であり、新たな有効な治療法の開発が望まれています。

     
    右副腎の神経芽腫が血管を巻き込んでいる

     

    進行した神経芽腫では治療が長期に及び、本人およびご家族の身体的、精神的負担が大きくなることが予想されます。

    したがって、小児がんを扱う医師のみならず、看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなどの医療チームが充実した医療施設で治療をお受けになることが重要です。

    参考文献:

    1. Ikeda H, et al: Experience with International Neuroblastoma Staging System and Pathology Classification. Br J Cancer 86:1110-1116,2002.

最終更新日:2005年11月11日

ページのトップへ