腎芽腫(ウィルムス腫瘍)

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  • 腎芽腫(ウィルムス腫瘍)は腎に発生する腫瘍で、多くは5歳以下(75%は3歳以下)のこどもにみられます。
    5%の例では両側の腎に発生し、稀に腎以外の部位にも発生します。

    腎芽腫では5%‐12%の頻度で泌尿器などの奇形をともなうことがあり、家族内発生も1%の例にみられます。

     
    腎芽腫は組織学的類似性から胎児期の後腎芽細胞を発生母地とする腫瘍と考えられている。

    米国では1年間に500人の患者が発生し、100万人に7-8人の頻度で小児腫瘍の6-8%をしめている。

    アジア系人種では頻度が少なく、日本の年間登録数は50例程である。

     

  • 腹部のしこり(腫瘤)や腹痛、血尿で発見されることが多く、外傷をきっかけに発見されることもあります。
    軽度の腹部打撲でも腫瘍の膜(被膜)が破れ、腫瘍内の出血や激痛の原因になります。
     
  • 腎芽腫は肺や肝に転移しやすい特徴があります。

     
    右腎の腎芽腫
       
    肺の転移

  • 腹部超音波検査、CT、MRIなどにより全身の検索を行い腫瘍の広がりの程度(進展度)を判定します。
     
    また、切除した腫瘍の顕微鏡による検査(病理検査)を行い、診断と悪性度の判定を行います。
     
    切除した腫瘍
       
    顕微鏡による病理検査


    腫瘍の進展度と病理検査の結果により化学療法(抗がん剤治療)、放射線療法を組み合わせた治療を行います。

    例えば、予後の良い組織型の場合、病期 I、IIでは腫瘍摘出後にアクチノマイシンD、ビンクリスチンなどを用いた化学療法を行います。また進行した病期III、IVでは腫瘍摘出後にアクチノマイシンD、ビンクリスチン、アドリアマイシンなどを用いた化学療法と放射線照射を行います。
     

    現在、腎芽腫のお子さんの約9割が助かるようになりました。

    たとえ転移があっても病理検査の結果が予後良好型であれば80%前後の治療成績が得られています。

     

  • 両側性腎芽腫の治療

    両側性の腎芽腫(病期V)では腎機能を温存するため、化学療法後に腫瘍摘出を行ったり、なるべく正常腎組織を残すなどの高度な治療技術が必要となります。

     
    両側腎に発生した腎芽腫
    (右腫瘍:赤矢印、左腫瘍:白矢印)

     



  • "History"

    米国における腎芽腫治療研究の功績:

    腎芽腫はすでに1814年、Dr Ranceにより1歳のこどもの両側性腎腫瘍として報告されている。その後、様々な名で呼ばれた本腫瘍は1899年、Dr Max Wilmsが7例の詳細な記述を発表したのを機にウィルムス(Wilms)腫瘍と呼ばれるようになった。

    当初、腎芽腫の治療成績は不良であったが、1930年代に手術・麻酔方法が確立し3人に1人が助かるようになった。さらにその後、放射線療法の導入、1954年の化学療法剤アクチノマイシンDの導入により治療成績は40%を越えるようになった。
    しかし、本格的に本腫瘍の治療成績が改善されるようになったのは1969年に米国の治療研究(NWTS)が始まってからである。

    現在、腎芽腫の治療研究は主にNWTSとヨーロッパを中心とするグループにより進められており、わが国でも規模は小さいもののグループ研究が行われている。
     


  • SCIENCE

    腎芽腫の原因遺伝子

    腎芽腫では5-12%の頻度で先天奇形を合併する。無虹彩症、片側肥大、停留精巣、尿道下裂などをともなうことが多く、特に腎芽腫に無虹彩、泌尿生殖器奇形、精神発達遅延を合併したものをWAGR症候群、腎疾患、生殖器奇形を合併したものをDenys-Drash(デニス・ドラッシュ)症候群という。一方、腎芽腫は身体の過成長や肥大をともなう症候群とも関連があり、これにはBeckwith-Wiedemann(ベックウィズ・ウィーデマン)症候群、Perlman(パールマン)症候群などがある。

    1990年、腎芽腫に関連する遺伝子として11番染色体短腕(11p13)にあるがん抑制遺伝子WT-1が単離された。WT-1は腎および泌尿生殖器の分化に関連し、転写調節因子として細胞増殖を制御している。WT-1遺伝子の異常は腎芽腫の10%以下に認められ、WT-1遺伝子は腎芽腫の原因遺伝子の一つと考えられている。Denys-Drash症候群ではWT-1遺伝子に変異があり、WAGR症候群ではWT-1遺伝子と近傍の無虹彩症原因遺伝子PAXの両者を含めた遺伝子座が欠失している。

    Beckwith-Wiedemann症候群では11番染色体短腕(11p15.5)に異常があり、この部位に第二の腎芽腫原因遺伝子の存在が想定されている。特にIGF2遺伝子は腎芽腫の一部で過剰発現しており、その有力な候補と考えられている。さらに家族性腎芽腫の原因遺伝子は17番、19番染色体の長腕にあると言われている。

     
    過成長 症候群・症状 関連遺伝子 遺伝子座 遺伝子の本来のはたらき
    なし

    WAGR症候群
    Denys-Drash症候群

    WT-1 11番染色体短腕13領域(11p13) 腎・泌尿生殖器の分化
    あり

    Beckwith-Wiedemann症候群
    Perlman症候群
    片側肥大

    WT-2? 11番染色体短腕15.5領域(11p15.5)  

     


最終更新日:2005年11月12日

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