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獨協医科大学日光医療センター 
心臓・血管外科
緒方 孝治

経皮的血管拡張術やステント留置術に代表される血管内治療も目覚ましい進歩をとげてきているが、重症虚血肢(潰瘍、壊疽)に対する救肢においては、下腿動脈バイパス術の重要性は色あせることなく、より末梢へのバイパスがもとめられることも少なくない。両側の重症下肢虚血(潰瘍、壊疽)に対し、足背動脈バイパス術により治療した症例を供覧する。


症例 82歳女性。
主訴:両側足趾潰瘍・壊疽、疼痛、足部発赤
現病歴:平成24年11月、右第5趾が変色し、近医で治療を開始したが改善しなかった。右第5趾壊疽、左第1趾潰瘍で、平成25年1月に当科へ紹介となった。
既往歴:脳梗塞→右不全麻痺
併存疾患:高血圧、心房細動
身体所見:右足部は、第1趾潰瘍、第4,5趾壊疽の状態で足背部は発赤していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左足部は、第1-3趾にチアノーゼを認め、足背部末梢はわずかに発赤していた 。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

下肢動脈造影


右:大腿動脈から前脛骨動脈中枢部まで開存、後脛骨動脈、腓骨動脈は閉塞、腓骨動脈中間部は開存
左:大腿動脈から脛骨腓骨動脈幹まで開存、前脛骨動脈、後脛骨動脈は閉塞、腓骨動脈中間部は開存

 治療方針


右:足背動脈バイパス
左:脛骨腓骨動脈幹、腓骨動脈に対する経皮的血管拡張術
を行う方針とした。

右下肢のバイパス手術
大伏在静脈を用い、膝下膝窩動脈-足背動脈バイパス術を行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


同時に第4,5趾の壊疽部は切断した。

 

左下肢の経皮的血管拡張術
左大腿動脈アプローチで腓骨動脈の拡張には2mmバルーン、脛骨腓骨動脈幹には3mmバルーンを使用して拡張した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


その後の経過
右足趾の壊疽の進行は止まったが、左足趾の壊疽は進行し、疼痛の改善も得られなかったた(写真6a, b)

 

 

 

脛骨腓骨動脈幹、腓骨動脈の拡張が得られた


放置すれば左下腿切断となる可能性が高いと判断し、左下肢動脈のバイパス手術を追加した。
術式は右と同様の左膝下膝窩動脈-足背動脈バイパス術となった。


術後の後療法として、シロスタゾール200mg/日の投与を継続している。
左足趾の進行も止まり、形成外科に依頼し、右第1趾切断、4,5趾断端形成、左第1-5趾切断術をおこない、経過良好で、下肢の大切断は回避された。

両側とも膝下部の動脈まで開存していたが重症虚血肢の状態であった。両側ともに足背動脈へのバイパス手術を行うことで、足趾壊疽の進行をくい止め、下肢大切断を回避することができた。特に左側では、経皮的血管拡張術により腓骨動脈まで血管拡張が得られたものの、壊死をくい止めることができずに足背動脈バイパス術を要す経過であった。


重症虚血趾の治療では、より末梢への確実な血行再建がもとめられ、足背動脈バイパスは、その有効な手段となりうる。