受付時間:月~土曜日 午前8時~11時
休診日:日・祝・第三土曜日
ホーム > 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)
心臓の解剖と血液の流れ

心臓4つの部屋(左右心房、左右心室)

心臓は、4つの部屋(左右心房左右心室)に分かれています。左右それぞれの心房と心室の間には逆流防止弁があり、それぞれを三尖弁僧帽弁といいます。また心室から全身または肺の間にも逆流防止弁があり、それぞれを肺動脈弁大動脈弁といいます。
血液の流れは、全身に酸素を供給した血液が、上大静脈と下大静脈から右心房に入り、三尖弁経由で右心室へ流れます。右室から肺動脈弁経由で肺動脈に流れて、左右肺動脈に分かれて各々の肺に到達し酸素交換を行います。 肺から戻ってきた酸素化された赤い血液は、左心房に戻り、僧帽弁経由で左心室に入り大動脈に駆出されて全身まで送られます。

大動脈弁狭窄症とは

加齢変性、リウマチ性、先天性二尖弁などさまざまな原因で、大動脈弁が硬くなり動きも悪くなり、血液の出口が狭くなってしまう病態が「大動脈弁狭窄症」です。出口が狭くなると血液を送り出すために心臓には過大な負荷がかかりますが、初期の段階では心筋を肥大させるため、心雑音はあっても長期間は無症状で経過することが少なくありません。

しかし、負担が重なると徐々に心機能は低下し、「狭心痛(心筋への血流が不足し胸の痛みが出る)」「失神発作(突然意識がなくなる)」「心不全(息切れ、むくみ、易疲労感など)」などの症状が出始めてからの予後は急激に悪化すると言われています。こういった症状が出るようになるとその後の経過は速く、もし治療しなければ個人差はあるものの一般的に狭心痛では5年、失神は3年、心不全は2年程度で死に至ることが多いといわれています。特に突然死する危険性もあります。


正常な大動脈弁

重度の大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症の病態
加齢とともに、弁の硬化は進行します。
加齢とともに、弁の硬化は進行します。
病態 左心室→大動脈への出口が狭くなります。
大動脈弁狭窄症の診断方法
診断は主に、経胸壁心エコーや経食道心エコー検査を行います。
経胸壁心エコー:前胸部からエコーをあて、大動脈弁の性状や重症度を測定します。
経食道心エコー検査:胃カメラに似たもので、食道から大動脈弁の形態、弁口面積などを計測します。手術の適応患者様が対象となります。
また、手術治療が必要な患者さんについては、術前検査としてCTや心臓カテーテル検査を行い、手術を安全にできることを目的としています。
  軽度 中等度 重度
平均収縮期圧較差(mmHg) <25 25~40 >40
弁口面積(cm2) >1.5 1.0~1.5 <1.0


大動脈弁の弁口面積は、 (        )cm2 です。
大動脈弁狭窄症の平均圧較差は(         )mmHgです。
→あなたの大動脈弁狭窄症の重症度は、(軽度 ・ 中等度 ・ 重度)です。
大動脈弁狭窄症の治療法

1. 内科的薬物治療

ACE阻害剤やβ-blockなどの内服治療を使用します。しかし根本的治療にはなりません。現段階で手術の適応がない患者様でも徐々に弁の狭窄が進行しますので、当院で責任を持って年に1回の心エコーでfollowさせて頂きます。

2. バルーン大動脈弁拡張術

高齢やリスクが高く外科手術の適応とならない患者さんに対し、バルーンによる弁拡張術が行われてきましたが、この方法は一時的に弁口面積が増加し症状が改善する場合が多いものの、再狭窄が起きる可能性が高く予後を改善しないという事実が判明しました。

3. 手術療法

重度な大動脈弁狭窄症治療の基本は、開胸外科的手術です。
大動脈弁置換術(生体弁・機械弁)

  • 皮膚を30cm切開し、胸骨正中切開を行います。
  • 心臓に到達したら、人工心肺を装着します。
  • 心臓を高濃度のカリウムを含んだ心筋保護液を注入し心臓と停止させます。
  • 大動脈を切開し、弁を切除後に人工弁にて逢着させます。
  • 弁が問題ないかを確認し、切開した大動脈を縫合し人工心肺を離脱します。
  • 止血を十分に行い、手術が終了となります。

開胸外科的手術
人工弁選択
1)年齢… ◎60歳以上/生体弁

◎60歳以下/機械弁


2)妊娠の可能性のある若い女性…生体弁
(抗凝固薬による出血や胎児への影響があるため)
生体弁 機械弁
耐久性が劣り、10~15年で壊れる。
抗凝固剤は最初の3ヵ月間だけで、後は、ワーファリンを内服するがその後は、抗血小板薬のみ内服でよい。
耐久性がよく、壊れにくい。
ワーファリンを内服するため、血栓症や出血の合併症が多い。
日本での大動脈弁狭窄症の大動脈弁置換術の成績
日本での大動脈弁狭窄症の大動脈弁置換術の成績 グラフ
  2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
症例数 3285 3213 3626 3700 3871 4284 4320 4007 4406 4135
30日死亡 3.0% 2.1% 2.8% 2.7% 2.2% 2.4% 2.2% 2.0% 1.7% 2.3%
手術の合併症
  1. 心臓の合併症として心筋梗塞、致死性不整脈、心不全、ペースメーカーなど
  2. 血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう):脳梗塞(のうこうそく)、腸管壊死(ちょうかんえし)、四肢の塞栓(そくせん)
  3. 出血、貧血、出血傾向、血液凝固因子欠乏
  4. 感染症:創部感染、肺炎、縦隔炎(じゅうかくえん)、胸骨骨髄炎(きょうこつこつずいえん)血液感染、全身感染、人工弁感染、人工血管感染
    感染症は細菌によって生じる事がほとんどです。手術中より、抗生物質を使い、消毒等を行い感染予防に努めていますが、それでも発症することがあります。それは、空気中、口腔内、鼻腔内、皮膚、気道、腸管 等には正常でも細菌が常在し、それらの菌が何らかの機転で体の中に入る為です。
    (注:特に(1)糖尿病の方及び(2)緊急手術を受けられる方は、細菌に対する抵抗力が落ちているので、感染症を生じやすくなっています。)
  5. 肝不全、腎不全
  6. 呼吸不全、長期人工呼吸管理、気管切開
  7. 胃潰瘍、十二指腸潰瘍
  8. 薬剤アレルギー、ショック
  9. 輸血による合併症[肝炎、感染症、GVHD(特殊な拒絶反応)]
  10. 口腔内損傷(口唇、舌損傷、歯損傷)
経カテーテル大動脈弁置換術について (TAVI)

心臓以外の合併疾患を有するなど、これまで手術の危険性の高い症例や体力の弱っている高齢の方では、外科手術による弁治療ができないか、手術を行っても術後の経過が思わしくない場合が多く見られました。このような開胸手術が困難な患者さんへの新しい治療法として、カテーテルにより大動脈弁を植え込むTAVI が2002年フランスで始まり、2013年日本でも行えるようになりました。

経カテーテル大動脈弁置換術とは、胸を開けずに、心臓が動いたままカテーテルを使用し心臓に人工弁を装着させる治療法です。弁の留置経路としては、足の大腿動脈から留置する最も低侵襲な、経大腿動脈アプローチ(transfemoral approach)が第一選択となりますが、足の血管が適さない場合には、心臓の先端(心尖部)から弁を挿入する経心尖アプローチ (transapical approach)があります。


図1 経カテーテル大動脈弁置換術の手術方法
図1 経カテーテル大動脈弁置換術の手術方法


図2 経大腿動脈アプローチ(左)と経心尖アプローチ(右)
図2 経大腿動脈アプローチ(左)と経心尖アプローチ(右)


図3 現在、使用できる弁


TAVI 適応患者
  • 基本的には外科的大動脈弁置換術の適応とならない、もしくは高リスクの患者
  • ご高齢(おおむね80歳以上)の方
  • 胸部の放射線治療の既往のある方
  • 肺気腫などの呼吸器疾患のある方
  • 肝硬変などの肝疾患のある方
  • 過去にバイパス手術などの開胸手術をしたことがある方
  • 悪性疾患合併のある方(1年以上の予後が期待できること)
  • 透析患者は適応外
  • 弁輪径が小さいなど解剖学的理由でできないこともあります。
TAVI 施設認定

TAVIは、学会及び厚労省により認可を受けた施設のみで施行可能な治療法です。当院は、2015年7月に保険により治療を行うことが出来る施設の一つとして、正式に認定されました。

ハートチーム治療

循環器内科医・心臓血管外科医・麻酔科医・専門看護師がハートチーム(心臓治療のプロ集団)として、適応から治療方法まで十分な検討を行います。また、連携を密にとりながら、実際の治療を、行っていきます。TAVIを施行するにあたり、このハートチームによる集学的診療・治療システムの構築は不可欠であると考えています。


当院でのチーム構成
(ハートチーム)
・インターベンション医 ・麻酔科医 ・ICU看護師
・心臓血管外科医 ・血管造影室看護師 ・病棟看護師
・心エコー専門医 ・手術室看護師 ・放射線技師
TAVI 国内治験の成績

●大阪大学医学部附属病院・榊原記念病院・倉敷中央病院の3施設の成績

64例にTAVIを施行
  • 経大腿アプローチ…37例
  • 経心尖アプローチ…27例
30日死亡率
  • 経大腿アプローチ…2/37例 5.4%
  • 経心尖アプローチ…5/27例 18.5%
TAVI の合併症
  1. 死亡
    TAVIの死亡率は10~15%と報告されています。
  2. 血栓塞栓症(脳梗塞、腸管壊死など)
    カテーテルの操作により、大動脈弁や大動脈壁についた石灰化や動脈硬化などのかすが剥がれ、血管の一部を詰まらせることがあります。また、カテーテル内の少量の空気による空気塞栓も起こる可能性があります。慎重に行っても、5~10%と高率に発症すると報告されています。
  3. 冠動脈閉塞による心筋梗塞
    弁を留置した際、稀に冠動脈の入口を閉鎖して、致命的な合併症を引き起こすことがあります。
  4. 造影剤による急性腎不全
    造影剤を使用し、放射線で画像を確認しながら弁を留置します。造影剤によるアレルギー反応や腎障害を引き起こすことがあります。腎不全が改善しなければ透になることもあります。
  5. 不整脈、ペースメーカー植込み
    大動脈弁下に刺激伝導系が走行しております。弁装着にあたり、固くなった弁で刺激伝導系を損傷してしまうことがあり重篤な不整脈を認めることがあります。5~10%と高率に発症すると報告されています。
  6. 穿刺部血管合併症
    鼡径部から直径6mmと太いシースを挿入します。操作時に血管損傷した場合には外科的緊急手術を要します。
  7. 緊急開胸手術
    操作中に心臓破裂や予期せぬ合併症が発症した場合は、人工心肺装着下に緊急開胸手術を行います。 この場合には致命的な結果になることがあります。
  8. 大動脈弁閉鎖不全症
    大動脈と装着した弁に隙間ができると逆流を認めます。多い場合はその後の予後の悪化の原因になります。
  9. 感染
    人工弁や創部感染を引き起こすことがあります。人工弁が感染し、抗生剤が効かない場合には致命的な結果になることがあります。
  10. 放射線による皮膚障害
    治療を行うために放射線を用います。しかし、多量の放射線を浴びてしまうと皮膚炎や色素沈着を生じることがあります。