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大腸疾患(大腸がんについて)

 皆さんこんにちは。当第一外科で大腸班チーフをしております山口悟です。我々大腸班では常時4~5名で診療を行っています。

 取り扱っている疾患は、大腸がん(結腸がん・直腸がん)を中心に大腸良性腫瘍、大腸憩室症、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)、また痔瘻や痔核といった肛門疾患に対しても診療を行っております。

 

疾患の概要・原因

 大腸がんについて

 大腸は1.5~2m程の長さの臓器で、結腸(けっちょう)、直腸(ちょくちょう)S状部(じょうぶ)、直腸(ちょくちょう)に分けられます。

 大腸は小腸に続いて、右の下腹から始まり、ぐるっと一周して肛門へつながります。大腸がんは食生活の欧米化に伴い増加の一途をたどっております。女性においては、大腸がん死亡は全悪性新生物による死亡のなかで最多であり、男性においても肺がん、胃がんに次いで3番目であり、さらに現在増加の傾向を示しております。非常に一般的ながんとなってきています。

発生する場所は比較的肛門に近いところに多く、6~7割が直腸やS状結腸にできます。

 

症状

 大腸がんの症状としては血便や排便異常(便秘や下痢、便が狭くなる)、貧血などがあり、このような症状がある場合には大腸の検査を受けることが望ましいです。早期大腸がんでは、ほとんど症状はありません。

  また市町村や職場の健診で行われる便潜血検査はご自分で採便し、専用の容器に保存し、病院に提出し、便に血液が混じっていないかどうかの検査を行なうものです。
大腸がんによる死亡を減少させるという検討結果がありますので、積極的に受けていただくことが大事です。便潜血陽性の人のうち3~5%大腸がん、2~3割に大腸ポリープが見つかるという検討結果があります。

 

検査方法

大腸がんの検査

1.直腸指診

 指を肛門から直腸内に入れて、しこりや異常の有無を調べます。

 

2.大腸内視鏡検査

 下剤を飲んで腸の中をきれいにしてから大腸カメラを用いて、肛門から虫垂の入口まで調べます。病変が見つかった場合には、顕微鏡の検査のための組織採取(生検)を行います。当科ではオーダーメイドの大腸がんの治療法選択のために、術前の内視鏡(図1)、超音波内視鏡検査(図2)などを行い、正確な診断に努めています。

 大腸   大腸

   (図1)大腸内視鏡通常観察          (図2)超音波内視鏡

 

3.注腸造影検査

 肛門からバリウムと空気を注入して写真を撮ります。がんの位置や大きさを検査します。検査前に検査食や下剤による処置が必要です。(図3)

  (図2)注腸造影

 

4.CT検査

 大腸がんの広がりや周りのリンパ節の転移、また肝臓や肺といった遠くにある臓器への転移の有無を調べます。より正確な診断のために造影剤を使用することがあります。

 

5.超音波検査

 肝臓などへの転移の有無を調べます。

 

6.MRI検査

 磁気を使用して、大腸がんの広がりやリンパ節の転移を調べます。

 

7.PET-CT検査

 放射性物質を注射し、その取り込みを見ることでがん細胞を検出します。

 

8.腫瘍マーカー検査

 がんの転移・再発の指標として行う血液検査です。大腸がんではCEAとCA19-9が一般的に用いられます。

 

 以上のような検査を用いて、腫瘍の場所、大きさや壁の浸潤範囲や、リンパ節転移および遠隔転移の状況などを治療前に正確に把握し、それに基づいた適切な治療方針を選択するよう心掛けています。

 

大腸がんの病期(ステージ)

 0期から4期まで分けられます。腫瘍の深達度(腫瘍がどれぐらい深く入り込んでいるかどうか)やリンパ節転移の有無、遠隔転移の有無によって判定しています。

0期:粘膜内にがんが限局している。
1期:固有筋層までにがんが限局している。
2期:固有筋層を超えているがリンパ節転移がない。
3期:リンパ節転移を認める。

4期:肝臓・肺・腹膜などに転移を認める。

 

治療方法

大腸がんの治療の概要

 0期や浅い1期の早期がんに関しては内視鏡的粘膜切除で治療が完遂することがあります。

 早期がんの一部と2期3期の進行がんに関しては、手術療法を行います。手術療法では腫瘍を残すことなく確実に切除することが大事であるため、各種検査で切除範囲を明確にし、安全かつ十分な切除範囲を決定しています。特に最近ではPET検査施行時に仮想内視鏡画像(図4)、体内の血管像 を作成することにより、より正確な術前の腫瘍存在部位の診断、腫瘍の深達度やリンパ節転移があるかどうかを判定しています。そして、大腸がん研究会発行の『大腸がん治療ガイドライン』に基づいて、最適な手術法・切除範囲を選択し患者様に提供しています。

  (図4) PET融合画像の一部

手術療法では、従来の開腹手術だけでなく、がんの進行度に応じて腹腔鏡手術(図5)や小開腹手術(図6)を積極的に採用し、術後の疼痛(痛み)の緩和、手術侵襲を軽減し、『患者様にやさしい医療』を提供できるよう日夜努力をしております。

2013年には132件の大腸切除術を行っております。

(図5) 腹腔鏡手術

(上)腹腔鏡下でのリンパ節の摘出。

(中)腸管同士の吻合(縫い合わせること)も腹腔鏡下で行います。 

(下)複数の小さな傷で手術を行います。

(図6) 小開腹手術

 

 肛門に近い直腸がんは、小骨盤という狭い空間に発生することや、周りを重要臓器(後側は仙骨、前側は男性では膀胱や前立腺、女性では子宮や膣)に囲まれていることもあり、結腸がんとは異なった治療の工夫が必要です。肛門に近い下部直腸がんの治療においては、局所再発を抑制するため、また自然肛門の温存を図り永久人工肛門を回避するため、術前に放射線治療と抗がん剤治療を施行し、その後に根治手術を施行しております(図7 A-D)。また、膀胱機能および性機能を温存するための神経温存手術を行っています。(図8)

 

(図7 A) 放射線化学療法前後の内視鏡写真。治療後には腫瘍はほぼ消失しています。

 

(図7 B) 放射線化学療法前後の注腸検査写真。壁が不整に見える範囲も小さくなっています。

 

(図7 C) 放射線化学療法前後のPET検査におけるとりこみの低下。核種の取り込みは少なくなり、癌の代謝が下がっている(増殖する勢いがなくなっている)ことがわかります。

 

(図7 D) 切除した標本では腫瘍は消失

(図8) 神経温存側方郭清

大腸がんの手術後にはだいたい5年にわたって、定期的な通院・検査を受けることが大事です。これは、転移を早めに発見するために行っています。やはり進行していないうちに発見される方が治療成績が良いです。

 

転移と再発

進行再発直腸がんの治療

 大腸がんでは4期であっても手術を含めた集学的治療(抗がん剤や放射線治療の併用)により効果が得られる場合があります。他科とも連携し、肝転移や肺転移の手術療法を行います。抗がん剤治療が必要となる大腸がんにおいては、外来(通院)での化学療法(抗がん剤治療)も積極的に施行しております。

 外来での化学療法の場合は専用の外来化学療法室(図9)で施行しております。

 進行再発大腸がんに対する化学療法では、最近認可された新規薬剤も精力的に使用して常に最良の治療効果が得られるよう努力しております。分子標的治療薬であるベバシツマブ・セツキシマブ・パニツムマブを加えたFOLFOX(XELOX)、FOLFIRI療法を中心に施行しております。 外来化学療法は月40~50症例(延べ人数)を施行しております。

 

 

 

 

(図9)外来の化学療法室

 

患者様に向けて

 体に優しく、個々の例に応じて最適な治療ができるよう日々考えております。 第一外科外来でお気軽にご相談ください。

 

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