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血清コレステロールの基準値について
臨床検査医学 家 入 蒼 生 夫
当院の血清総コレステロールの基準値は120〜260r/?ですが、この上限値が他の施設で用いられている値、例えば220r/?と比べ高値ですがどうしてですか?それなら260r/?までは正常なのですね?というご質問を受けることがあります。
臨床検査の測定結果の解釈にあたっては、なにか目安となる基準がなければ得られた数値の意味を判断できません。そこで、健康人集団における測定値の分布を求め、そこから共通の尺度「モノサシ」として利用しうる基準値(reference value)、あるいはその分布である基準範囲(reference interval)を求めて判定します。基準範囲は、健康と判定された人の測定値全てを示したものではなく、分布の中央部95%を含むと推定される範囲(95%信頼区間)です。これに照らし合わせることで、被験者の検査成績の位置づけを行うものです。
問題の総コレステロールは、年齢、性、栄養環境、地域差などによっても変化しますが、特に近年、食事の西欧化に伴い日本人の健康人総コレステロール値はより高値側に大きくシフトしてきました。当院の基準値120〜260r/?は800名を超える健康人検診検体の検査成績から上記のような統計学的手法を用いて得られたものです。
一方被験者検査成績の正常・異常の判断は病態識別(カットオフ)値、すなわち有病者と健康人を識別する最適値を用いて判定します。高コレステロール血症は血清脂質の検査値異常を意味します。コレステロール値の分布は連続しており、本症の病態識別値を求めるのは容易ではありません。高コレステロール血症の病態識別は、多数の疫学的調査の成績をもとに設定されています。日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患診療ガイドライン2002年版」では、高コレステロール血症の病態識別値は220r/?以上としています。大規模な前向き調査や横断的調査、大規模疫学調査かた得られた血清コレステロール値と冠動脈疾患の有病率、発症率などの関係を検討し、冠動脈疾患の相対的リスクの大きさを根拠に220r/?以上という診断基準が決定されました。ただし、総コレステロールの管理目標値は、冠動脈疾患がなく、他の主要危険因子(RF)のない人では240r/?以下ですし、RF 2つまで220r/?以下、3つ以上では200r/?、更に冠動脈疾患の既往のある人では180r/?となっております。
「基準値」と「病態識別値」を区別して用いることが重要です。
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