慢性呼吸器疾患(CRD)とは

COPDのファクト

増悪の予防・治療

 増悪とは、COPDの経過中に安定期の日内変動を超えた臨床症状の悪化が急性に発症した状態である。増悪は、入院回数を増やし、死亡率を高め予後を悪化させる。また、増悪より回復しても機能障害が進行することが多く、COPD管理の中でも最も重要なものであり、増悪の予防・早期発見・早期治療が大切である。増悪の原因としては気道感染が最も多いが、約1/3は原因不明である。増悪を減少させるものとして、インフルエンザワクチンの他、近年、吸入ステロイド、長時間作用性β2刺激薬、長時間作用性抗コリン薬などが報告されている。COPDの経過中に増悪が疑われた場合には、増悪の診断だけでなく、重症度、原因、合併症の有無などを含めた評価を行い、治療内容の決定や入院の適応などを判断することが大切である。

1.増悪の予防

1)ワクチン

 インフルエンザワクチンは増悪による死亡率を50%低下させることが報告されており、すべてのCOPD患者にインフルエンザワクチンの接種が薦められる。肺炎球菌ワクチンも高いエビデンスはないが、同様に推奨される。

2)禁煙

 喫煙者は非喫煙者と比べて増悪の回数が多く、禁煙により増悪は約1/3に減少することが示されている。

3)吸入ステロイド薬

 増悪を繰り返す例(例えば、過去3年間で3回の増悪を繰り返す)では、吸入ステロイド薬を追加することにより増悪の頻度を減少させ、QOLの悪化を抑制することが期待できる。

4)その他

 長時間作用型抗コリン薬やβ2刺激薬で増悪を減少させる可能性が報告されている。

2.在宅での対処
 増悪の症状が出現した場合、まず気管支拡張薬の吸入を行う。すでに使用されている時は、その回数を増やすか用量を増量することになる。数時間後に再評価を行い、症状や所見に悪化がみられれば病院を受診する。一方、最初の気管支拡張薬吸入後に寛解や改善が得られれば、気管支拡張薬の吸入を続けながら可能であれば吸入の量や回数を減らしていく。
 在宅管理の方法として、レスキュー用の経口ステロイド薬(プレドニゾロン30〜40mg/日)や経口抗菌薬を前もって処方しておくこともある。この場合、気管支拡張薬吸入による初期治療で寛解・改善がみられなければ経口ステロイド薬を服用する。また、膿性痰の増加や痰量の増加など細菌感染の所見がみられれば経口抗菌薬を服用する。

3.外来での対処(図7)
 在宅での対処で改善がない場合に外来受診となるが、症状によっては在宅での対処を行わずにすぐ外来受診する場合もある。レスキュー用の経口ステロイド薬や経口抗菌薬を処方していない場合は気管支拡張薬の効果がみられない時点で早期に受診するよう指導しておく。


 外来では薬物治療および他の治療を行いながら、入院もしくはICU入院の適応を判断する。また外来管理を行う場合は1〜3日後に再評価を行う。外来受診時に重要で最初にすべきことは、酸素療法などの適切な治療を迅速に開始することと、ICU入所を含めた集中治療の必要性を判断することである。


図7
1)酸素療法

 受診時にはまず動脈血ガス分析を行い、PaO2 60TorrまたはSpO2 90%以上を目標に酸素吸入を開始する。投与開始または酸素投与量変更の30分後には再度動脈血ガス分析を行い、高CO2血症や呼吸性アシドーシスの有無を評価する。

2)気管支拡張薬

 吸入気管支拡張薬の用量ないし回数の増加を行う。循環器系に注意しながら、症状に応じて30分〜6時間ごとに反復投与する。改善が得られない場合は短時間作用型吸入β2-刺激薬と吸入抗コリン薬の併用療法、アミノフィリン点滴静注を考慮する。

3)ステロイド薬

 これらの治療に加え、ステロイド全身投与を考慮する。ことに安定期のFEV1が予測値の50%未満であるような低肺機能例の増悪時には本剤投与が考慮されるべきである。投与量および投与期間はプレドニゾロン30mg/日、14日間以内が薦められる。

4)抗菌薬

 喀痰の量や膿性度の増加があれば細菌感染を疑い、抗菌薬の投与を行う。日本呼吸器学会のガイドラインによると、外来では経口ペニシリン薬、ニューキノロン薬が推奨される。

4.入院の適応判断
 呼吸性アシドーシスの出現や重大な合併症の存在、換気補助療法の必要性は増悪による死亡に非常に関連した因子である。またそれ以外でも安定期の病期が進行した例では入院を要することが多い。さらに低酸素血症や高CO2血症、呼吸性アシドーシスが重度または増悪する例や精神状態の悪化がみられる例など、生命を脅かすような増悪の場合はICUでの管理が望ましい。
 日本呼吸器学会のガイドラインでは入院の適応を図8のように示している。すなわち、安定期の病期がIIIおよびIV期のCOPDでの増悪症例、呼吸困難の出現・増悪や重症を示唆する徴候の出現がみられる例、増悪に対する治療への不応例、意識状態の不安定もしくはレベル低下がみられる症例、高齢者での増悪、重大な合併症が存在する症例、在宅サポートが不十分な症例で入院加療を考慮する(表4)。さらに低酸素血症や高CO2血症、呼吸性アシドーシスが重度または増悪する症例や精神状態の悪化がみられる症例など、生命を脅かすような増悪の場合はICUでの管理が望ましい。


図8
表3 COPD質問票
COPD 質問票
質問 選択肢 ポイント
1.あなたの年齢はいくつですか? 40-49歳 0
50-59歳 4
60-69歳 8
70歳以上 10
2.1日に何本くらい、タバコを吸いますか?
 (もし、今は禁煙しているならば、以前は何本くらい
  吸っていましたか?)
 今まで、合計で何年間くらい、タバコを吸っていましたか?
┌1日の喫煙箱数=1日のタバコ数/20本(1箱入数)
└Pack・year=1日の喫煙箱数×喫煙年数
0-14 Pack・year 0
15-24 Pack・year 2
25-49 Pack・year 3
50 Pack・year以上 7
3.あなたの体重は何キログラムですか?
 あなたの身長は何センチメートルですか?
[BMI=体重(kg)/身長(m)2
BMI<25.4 5
BMI 25.4〜29.7 1
BMI>29.7 0
4.天候により、せきがひどくなることがありますか? はい、天候によりひどくなることがあります 3
いいえ、天候は関係ありません 0
せきは出ません 0
5.風邪をひいていないのに痰がからむことがありますか? はい 3
いいえ 0
6.朝起きてすぐに痰がからむことがよくありますか? はい 0
いいえ 3
7.喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒュー)がよくありますか? いいえ、ありません 0
時々、もしくはよくあります 4
8.今現在(もしくは今まで)アレルギーの症状はありますか? はい 0
いいえ 3
参考:Price D. Tinkeiman D.Nordyke RJ. Isonaka S. Halbert RJ. Utility of a symptom-based questionnaire for identifying COPD in smokers (Session C46:Poster F44). Orlando, Florida. American Thoracic Society 100th International Conference, May 21-26,2004.[abstract]Am J Respir Crit Care Med 2004:169 (7 Suppl); A605.
表4 COPD診断ツール
COPD 診断ガイド
診断ツール 診断を裏付ける所見
身体診察 COPDでは以下の所見が認められることが多いが、これらがなくともCOPDを否定することはできない。また、これらの所見はCOPDに特異的なものでもない。
・聴診での呼気時の喘鳴
・呼気時間の延長
・肺の過膨張
スパイロメトリー

注:PEFは気道閉塞を過小評価するおそれがあるため、PEF値が正常でもCOPDの可能性を否定することはできない
不可逆性*1気流閉塞の証明:
・気管支拡張薬投与後のFEV1/FVC<0.70*2

*1:喘息とCOPDが共存する患者もある。医師はCOPDについて評価している患者でも、喘息の診断に一致する症状および病歴があれば喘息の可能性も認識しておく必要がある。こうした患者は可逆性と不可逆性の両要素をもつ気流閉塞がみられる。
*2:危険因子への曝露歴および慢性病状があるが、スパイロメトリーの結果が正常な患者はCOPDの「リスクがある」とみなされる。これら全例がCOPDを発症するわけではないが、全例に危険因子への曝露を抑えて患者の進行をくい止めるための注意を重点的に行うべきである。
診断的治療 気管支拡張薬による改善
参考:Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)の許諾により転載。Global Strategy for Diagnosis. Management. and Prevention of COPD. 2004 http://www.goldcopd.org

PEF:peak expiratory flow(最大呼気流量)、FEV1:forced expiratory volume in one second(1秒量)、FVC:forced vital capacity(努力性肺活量)
評価
  • 上記の診断的評価および医師の臨床的診断よりCOPDの診断が裏付けられた場合は、COPD治療の流れに進む。
  • 診断的評価および医師の臨床的判断またはそのいずれかによってCOPDの可能性が低いとみられる場合は、別の診断(関連がある場合は喘息を含む)または専門医への紹介を検討する。