慢性呼吸器疾患(CRD)とは

COPDのファクト

病理学的異常

 気道は、気管より先は不規則な2分岐を繰り返しながら、約16分岐で終末細気管支に達し、最終的には肺胞に至る。終末細気管支から肺胞までにはさらに1次〜3次の呼吸細気管支を経て、肺胞道から肺胞嚢に至る。COPDに特徴的な病理学的異常は、中枢気道、末梢気道、肺胞および肺血管に認められる。

(1)末梢気道

 末梢気道とは、内径が2mm未満の小気管支、細気管支を指す。多くの場合、COPDの早期の異常は末梢気道の炎症性変化である。気道壁と気道内腔への炎症細胞浸潤、粘膜浮腫、粘液の過分泌などがみられ、さらに上皮の杯細胞化生や扁平上皮化生による末梢気道の狭窄がみられるようになる。慢性の炎症は末梢気道壁の傷害と修復を繰り返し、次第にリモデリングへと進み、形態と機能の異常をきたしてくる。最近、Hoggらは159例のCOPD患者の摘出肺の末梢気道を検討した結果、図4に示したように、小気道内腔の狭窄(a)、小気道壁の肥厚(b)、炎症細胞の浸潤(c, d) が重症度とともに進行することを報告している。

図4
(2)中枢気道

 中枢気道とは、気管から始まり内径2mm以上の気道を指す。COPDの中枢気道病変としては、マクロファージとCD8+ T リンパ球を中心とした炎症がみられる。また、気道上皮細胞の杯細胞化生や扁平上皮化生、線毛の傷害、粘膜下腺の肥大などがみられ、粘液の過分泌を伴っている。この様な中枢気道の病変は、ほとんどの場合末梢気道病変や肺胞病変と同時に認められる。

(3)肺胞

 肺実質は、呼吸細気管支、肺胞道、肺胞嚢、肺毛細血管網などで構成され、ガス交換に与る。COPDで最もよくみられるこの部位の異常は、小葉中心性肺気腫であり、呼吸細気管支の破壊と拡張が見られる。最初は上葉にみられるが、進行すると肺全体にびまん性に拡がり、肺血管床も破壊される。汎小葉性肺気腫はα1 アンチトリプシン欠損症に特徴的な型で、主に下葉に生じ、小葉全体に広がり、呼吸細気管支とともに肺胞道や肺胞嚢に破壊や拡張が見られる。

(4)肺血管

 COPDでは比較的早期より、血管壁の肥厚がみられることが報告されている。初期の障害は肺動脈内皮細胞に起こるが、内皮細胞は血管のトーヌスの調節と細胞増殖に重要な役割を有しているため、その障害はその後の血管系の変化の引き金となる。内皮障害に続き、血管平滑筋の増殖、血管壁へのマクロファージやCD8+ Tリンパ球などの炎症細胞浸潤が起こる。進行例では、血管壁が肥厚し、肺高血圧を呈するようになる。また、気腫性病変による肺毛細血管床の破壊が見られる。