慢性呼吸器疾患(CRD)とは

COPDのファクト

病態生理学的異常

 このようなCOPDの病理学的変化はそれに伴った生理学的異常を引き起こす。特徴的な生理学的変化は、粘液過分泌、線毛機能異常、気流制限、肺過膨張、ガス交換障害、肺高血圧、肺性心などである。そして、このような様々な生理学的異常が慢性の咳、痰、呼吸困難などのCOPDに特徴的な症状を引き起こす。

1)閉塞性障害

 最も大きな機能異常は、気流制限である。COPDに特徴的な気流制限は、完全には可逆性ではない。可逆性に乏しい気流制限の原因の主要なものは、リモデリングであり、気道の線維化と狭窄である。気流制限の主な部位は内径2mm未満の気管支や細気管支を含む末梢気道である。この部位は、臨床的には早期に病変を把握するのが困難であり、”silent zone”と呼ばれていた。
 すなわち、気道は分岐を繰り返すたびに個々の気道の断面積は小さくなるが、その断面積の総和はもとの気道の断面積より大きくなる。気道抵抗は半径の4乗に反比例するため断面積が大きくなると、気道抵抗は減少する。実際に気道の分岐と抵抗を測定すると、6次気管支くらいまでの中枢気道での抵抗が最も大きく、末梢に行くほど抵抗が小さくなる。したがって、従来の呼吸機能検査法である気道抵抗,スパイログラムなどではこの部位の病変は広汎な拡がりを持つまで検出されなかった。このため末梢気道の異常の早期検出を目標とする検査法の開発がすすめられ、フローボリューム曲線、クロージングボリューム(CV)、動肺コンプライアンスの周波数依存性の測定などが相次いで考えられた。
 これらの検査法が末梢気道の異常の早期診断に直接的に有用かどうかという観点からいくつかの検討がされている。Cosioらは、生検肺組織の末梢気道の形態的変化と呼吸機能検査成績とを対比して研究した結果、クロージングキャパシティ(CC)、VisovおよびΔN2の3つが軽微な末梢気道の病変の存在を検出するのに最も鋭敏であったとしている。ここで、Visovとは、He−O2混合ガスを吸入させ、フローボリューム曲線検査を行い、空気吸入時の下行脚とHe−O2吸入時の下行脚が一致する肺気量位であり、これが大きいと末梢気道病変を示す。また、ΔN2は、単一呼吸N2洗い出し曲線の第III相の傾きであり、これが大きいほど末梢気道病変を表している。
 末梢気道病変がこのような気流制限を起こしてくる要因としては、1)肺胞破壊に伴う弾性収縮力の低下と肺胞-気道結合部の離断による小気道の拡張障害、2)気道内腔への粘液分泌と、3)炎症細胞浸潤や線維化による気道壁肥厚の三つの機序が重要である(図5) 。


図5
2)拡散障害

 肺胞壁の破壊による気腫性変化と毛細血管床の破壊は、肺胞ガス交換面積の減少を来たし、その結果肺の拡散能力(DLco)は低下する。一方、肺気量は大きくなるのでDLco/VAはさらに低下し、より診断的意義が高い。これに対し、間質性肺炎でDLcoが低下する場合は肺気量の低下も加味されているため、DLco/VAの低下は肺気腫の場合とは逆に軽減する。また、DLco、DLco/VAは肺実質破壊の程度を表しているため、COPDと気管支喘息との鑑別にも有用である。