慢性呼吸器疾患(CRD)とは

COPDのファクト

診断

1.COPDを疑う症状
 咳、痰、労作時の息切れなどの臨床症状のいずれかがあるか、また臨床症状がなくてもCOPD発症の危険因子、特に長期間の喫煙歴があるときには、COPDである可能性を疑う。咳と痰は早期より、息切れはある程度進行してから慢性的、あるいは反復して起こるが、これらは非特異的な症状であるため、老化による症状と見過ごされたり、風邪などと考えられたりしていることが多いため、まず本症を疑うことが大切である。

2.診断に必要な検査
 COPDは、完全には可逆的ではない気流制限の存在と、閉塞性障害を来す他疾患の除外によって診断される。このために用いる検査がスパイロメトリーである。

1)呼吸機能検査

(1)確定診断
 COPDの診断に最も必要な検査はスパイロメトリーである。症例によってはさらに詳しい呼吸機能検査が必要になる場合もあるが、日常の診療にはこれだけでよい。スパイロメトリーで一秒率(FEV1% 、FEVl/FVC)が70%未満であれば閉塞性障害と判定する。β2刺激薬吸入後のFEV1%が70%未満の場合にはCOPDの可能性を考え、他疾患を否定できれば確定診断としてよい。

(2)重症度の診断(表1)
 気流制限の重症度は標準値に対するFEV1の割合(%FEV1)をもって評価する。I期:軽症(FEV1≧80% 予測値)、II期:中等症(50%≦FEV1<80% 予測値)、III期:重症(30%≦FEV1<50% 予測値)、IV期:最重症(FEV1<30% 予測値あるいはFEV1<50% 予測値で慢性呼吸不全あるいは右心不全合併例)と判定する( 表1 )。診断基準として用いられたFEV1%が病期分類に用いられない理由は、COPDが進行するとエアートラッピングによりFVCも低下するため、中等症(II期)以上では必ずしも重症度を適切に反映しないからである。
 重症(III期)以上では右心不全/肺性心あるいは呼吸不全を有する患者の割合が多くなり、これが進行すると気流制限を示す一秒量関連指標だけでは患者の全体像を反映しない。

表1 COPDの病期分類
病 期 特 徴
0期:COPDリスク郡 スパイロメトリーは正常慢性症状(咳嗽、喀痰)
I 期:軽症COPD(Mild COPD) FEV1/FVC<70%
FEV1≧80% predicted
慢性症状(咳嗽、喀痰)の有無を問わない
II 期:中等症COPD(Moderate COPD) FEV1/FVC<70%
50%≦FEV1<80% predicted
慢性症状(咳嗽、喀痰)の有無を問わない
III 期:重症COPD(Severe COPD) FEV1/FVC<70%
30%≦FEV1<50% predicted
慢性症状(咳嗽、喀痰)の有無を問わない
IV 期:最重症COPD(Very Sever COPD) FEV1/FVC<70%
FEV1<30% predicted あるいは
FEV1<50% predicted かつ慢性呼吸不全あるいは右心不全合併
補足:FEV1値は原則として気管支拡張薬投与後の値を用いること。

(3)その他の呼吸機能検査
 フローボリューム曲線が気道病変優位型の評価に役立つ。フローボリューム曲線の下降脚の後半約2/3は呼出努力に依存しない最大呼気速度Vmaxとなっており、V=Pst(l)/Rusの関係がある。COPDの気流制限には主に(1)肺胞弾性収縮力の低下、(2)区域、亜区域レベルの気管支断面積の減少、(3)区域、亜区域レベルの気管支のつぶれやすさの増大が関与しVmaxが低下する。 COPDにおけるフローボリューム曲線は、呼気早期においては一過性にピークを示した後、急激な流量の低下を示し、その後は低流量が持続するというパターンを示す。肺内気道の閉塞障害早期には肺活量の50%におけるVmax (V50)、25%におけるVmax (V25)が低下し、進行してくるとPEF(Peak Expiratory Flow)からすべての肺気量位でのフローの低下が認められるようになる。V50/V25の増加(4以上)を末梢気道の早期診断の指標として用いることもある(27)。しかし閉塞性際気管支炎やびまん性汎細気管支炎など気道病変を主体とした他の疾患との鑑別は呼吸機能検査だけからでは難しく、臨床所見、画像所見などを参考に総合的な診断が必要である。 その他、クロージングボリューム検査におけるCVやΔN2の増大や、DLcoやDLco/VAの低下などがみられる。

2)画像所見

 気腫優位型では、胸部X線にて過膨張所見を認めるが、高分解能CTでは肺胞破壊がLAA(低吸収領域)として描出できる。画像診断は、閉塞性障害や息切れなどの症状を呈する他の呼吸器疾患や循環器疾患などの鑑別に力を発揮する。
気腫優位型の診断には高分解能CTが最も有用であるが、これは肺拡散能(DLco)の低下の程度とよく相関する。

3)その他の検査

 動脈血の酸素、炭酸ガス分圧を測定するが、近年はパルスオキシメーターにより非観血的に推定出来る。しかし、これで測定できるのは酸素飽和度だけであり、高炭酸ガス血症が疑われる時は血液ガスを測定する必要がある。

3.鑑別診断
 COPDと鑑別を要する疾患を表2に示した。

表2 COPDと鑑別を要する疾患

1.気管支喘息

2.びまん性汎細気管支

3.先天性副鼻腔気管支症候群

4.閉塞性細気管支炎

5.気管支拡張症

6.肺結核

7.麈肺症

8.肺リンパ脈管筋腫症

9.うつ血性心不全