雷鳴 第47回文化会創作研究発表会
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【死と音楽について】 人の心は様々な要因で天気のように変わるものであるが、その一つの要因に「音楽」が挙げられる。音楽は人の心に寄り添い、癒す。もちろん私の心のそばにも音楽があり、それは心を操縦し落ち着かせてくれる、薬のような、そして温度のある生き物のように思う。 そんな人々の営みに根付く音楽は、「死」にも寄り添う。「死」に寄り添う音楽は、故人が生前好んでいた曲や、葬儀の際に流れるクラシック音楽など様々である。例えば、無宗教葬と呼ばれる葬儀形式の中でも、特に音楽葬は自由度が高く、出棺や葬儀の式中に故人が好んでいた楽曲や、縁の深かった曲をかけてお見送りをするそうだ。また、クラシック音楽にも定番の曲が存在するので、ここではその一部を紹介するとともに共通点を探っていこうと思う。(今回の雷鳴祭で演奏する曲(ロンドンデリーの歌)もあるので、ぜひ読んでいただきたい。) 《弦楽のためのアダージョ》 この曲はジョン・F・ケネディの葬儀で使用されてから有名になり、訃報や葬送、慰霊祭などで定番の曲として使われるようになった。しかし、作曲者のバーバー自身はそういった使われ方に対して「心外である」という発言をしており、現代では作曲者の意向とは逆に人々の悲しみに寄り添う曲となっている。また、「アメリ」「プラトーン」など映画の中でも使われる。 《デリー地方のアイルランド民謡(ロンドンデリーの歌)》 この曲は世界で最も広く親しまれるアイルランド民謡の一つである。様々な歌詞によって歌われ、特に《ダニー・ボーイ》のタイトルのものが有名である。オーケストラや今回の雷鳴祭のようにアンサンブルで演奏されたり、ピアノのソロ曲として演奏されたりする。また、ダイアナ元皇太子妃の葬儀で聖歌隊により歌われるなどして宗教音楽としてもつかわれる。 《G線上のアリア》 この曲には原曲が存在し、バッハの《管弦楽組曲第3番 ニ長調 第2曲「Air」》をドイツのヴァイオリニストであるアウグスト・ウェルヘルミがピアノ伴奏付きのヴァイオリン独奏のために編曲したものの通称である。この曲そのものがあまりにも有名であるため、原曲が存在していたことは今回初めて知った。この曲は長調であり、音楽的には明るい印象を与えるだろうが、テンポが大変ゆっくりであったり、途中での短調への転調があったりすることで、曲には緩急があり、悲しみを感じている人の心にも寄り添えるのではないのだろうか。 《アルビノーニのアダージョ》 - 16 -

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