雷鳴 第47回文化会創作研究発表会
18/28

- 17 - ←ロンドンデリーにある 聖コロンバ大聖堂 この曲は、トマゾ・アルビノーニの《ソナタ ト短調》の断片に基づく編曲と推測されるが、アルビノーニの素材は全く含まれていないという不思議な作品だ。また、日本や欧米では葬儀の時、最も使われている曲の一つでもあるようで、1922年5月、ボスニア内戦で亡くなった22人の民間人死者を追悼し、その翌日から地元のチェリストが22日間その場でこの曲を演奏したというエピソードもある。 以上の曲以外にも、マーラーの《交響曲第5番 第4楽章》やエルガーの《エニグマ変奏曲 ニムロッド》(最近だと、エリザベス女王国葬の前奏で流れた)など、有名なクラシック音楽が葬儀の際使われる。 このように葬儀の際使われるクラシック音楽を調べてみると、宗教と音楽の根強い関係性が伺えた。また実際に曲を聴くと、教会にあるパイプオルガンを思わせる、重厚感のある和音の響きが心に深く染みわたっていくのを感じられた。そして共通点として、曲調が穏やかかつゆったりとしたテンポで進みながらも、転調などをすることで、「緊張と緩和」、「冷たさと温かさ」といった対比を感じさせている点が挙げられる。そうした対比が、誰もが知る有名な曲であるかつ、「死」という大きな存在を目の前にした人々の心に寄り添える一つの理由であると私は考える。 〜追記〜 「生」と音楽についても考察してみた。「生」として新たな生命が生まれる出産と音楽の関連を調べると、葬儀と比べ特定の曲が目立って有名ということはなかった。出産時音楽を流す理由は、お母さんが分娩室で気持ちを落ち着かせたり、耳に入る雑音を打ち消したりするためであり、聴く人に安心感をもたらす、心音や自然音などの1/fゆらぎを織り込んだ音楽がおすすめであるようだ。

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る