令和5年度 獨協医大埼玉医療センター 病院情報の公表

病院指標

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

医療の質指標

  1. リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率
  2. 血液培養2セット実施率
  3. 広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率
年齢階級別退院患者数ファイルをダウンロード
年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 1217 845 665 1175 1604 2780 3362 6413 3722 281
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
眼科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
020110xx97xxx0 白内障、水晶体の疾患 手術あり 片眼 1125 2.42 2.54 0.00 75.07
020110xx97xxx1 白内障、水晶体の疾患 手術あり 両眼 353 4.06 4.46 0.00 74.88
020160xx97xxx0 網膜剥離 手術あり 片眼 290 6.03 7.81 0.00 55.60
020200xx9710xx 黄斑、後極変性 手術あり 手術・処置等1 あり 手術・処置等2 なし 165 4.44 5.67 0.00 70.08
020180xx97x0x0 糖尿病性増殖性網膜症 手術あり 手術・処置等2 なし 片眼 104 4.54 6.10 0.00 56.58

当院では、白内障手術、緑内障手術および網膜硝子体手術を数多く行っています。白内障手術に関しては、日帰りあるいは入院で対応しています。緑内障に対しては、流出路再建術、濾過手術、チューブシャント手術、毛様体パルスレーザーなどの多くの術式を行っています。また、非常に多くの網膜硝子体手術を行っています。特に、難治性の網膜硝子体疾患にも対応いたします。

消化器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060100xx01xxxx 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。) 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 346 2.35 2.61 0.00 67.00
060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎 限局性腹腔膿瘍手術等 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 235 6.54 8.75 0.00 73.92
060020xx04xxxx 胃の悪性腫瘍 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 142 6.80 7.61 0.00 74.05
060035xx04xxxx 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍 早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術 93 6.70 6.45 0.00 72.76
06007xxx97x0xx 膵臓、脾臓の腫瘍 その他の手術あり 手術・処置等2 なし 63 9.41 11.65 4.76 75.13

診療科別症例数トップ5

  1. 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。)内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術
    大腸ポリープの多くは腺腫(良性腫瘍)でありますが、一部には癌(悪性腫瘍)も含まれます。一定のサイズを超えるポリープは内視鏡的切除の適応となります。小腸の腫瘍は、他の消化管と比べると発生頻度は低いですが、貧血や出血の原因となることがあります。
    カプセル内視鏡や小腸鏡で発見することが可能で、内視鏡で切除することも可能です。
  2. 胆管(肝内外)結石、胆管炎、限局性腹腔膿瘍手術等 手術・処置等2なし 定義副傷
    胆管結石とは、肝臓で作られた胆汁の流れ道である胆管に石ができる病気です。症状が出ないことがありますが、治療しないと石が胆管を塞いでしまって、胆汁が流れなくなります。胆汁がつまると胆管内の圧が高くなり、腹痛や黄疸の症状が出ます。さらに、つまっている胆汁に細菌が感染すると胆管炎を発症します。胆管炎は治療が遅れると重症化するため、早急に治療が必要です。治療はERCPという内視鏡検査が主に行われます。胆管炎は結石だけでなく、過剰な免疫反応で胆管の壁が肥厚する病気や、膵臓や胆管の悪性腫瘍でも起きることがあります。
  3. 胃の悪性腫瘍 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術
    胃癌の大きな原因の一つであるピロリ菌の感染は減っていますが、胃癌の罹患率はあまり変化していません。しかし、胃癌は初期に発見すれば内視鏡検査で治癒が見込めます。
    ESDという内視鏡検査で早期の胃癌の治療を行っています。十二指腸のポリープは経過観察で良いものが多いですが、癌や将来的に悪性になりうる腫瘍も存在します。治療は胃癌と同じようにESDとなりますが、十二指腸の粘膜は非常に薄いため治療に際には、穿孔(消化管に穴が空く)に十分注意する必要があります
  4. 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍 早期悪性腫瘍大腸粘膜剥離術
    厚生労働省の調べでは、近年大腸癌は男女ともに増加しています。男性では肺癌、胃癌に次いで3番目、女性では最も死亡率の高い癌となっています。大腸癌の早期発見のスクリーニング検査で便潜血反応検査があり、集団検診で受けることが可能です。
    大腸癌は粘膜に癌がどれだけ浸潤しているかで治療方針が変わります。粘膜への浸潤が浅い場合は内視鏡検査での治療が適応となります。一方、粘膜への浸潤が深い場合は手術治療の適応となります。浸潤の程度は、内視鏡検査にて癌のサイズや形態、色調を見ると同時に、拡大内視鏡で癌の表面の血管の構造を見て判断しています。
  5. 膵臓、脾臓の腫瘍 その他の手術あり 手術・処置等2なし
    国立がん研究センターの調べでは、膵癌は罹患数の増加とともに、死亡数も増加しています。膵癌は癌が発生しても小さいうちは症状が出にくく、腹痛、食欲不振、黄疸、背中の痛み、急な糖尿病発症・悪化が初期症状になることもあります。
    自覚症状がなく、健診異常だけの場合には、画像検査、超音波内視鏡検査、ERCPなどで質的診断、病理学的診断を行い、早期診断、治療方針決定を早急に行えるように段取りをします。自覚症状、黄疸などの症状がある場合には症状改善と診断を並行して行い、速やかな診断、治療につながるように段取りします。消火器内科だけでなく、外科、病理診断科、放射線科などと連携して、病院全体で膵癌への治療に取り組みます。
外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060035xx010x0x 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍 結腸切除術 全切除、亜全切除又は悪性腫瘍手術等 手術・処置等1 なし 定義副傷病 なし 129 14.40 15.12 0.78 71.57
060160x001xxxx 鼠径ヘルニア(15歳以上) ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等 98 3.77 4.55 0.00 74.90
060010xx99x41x 食道の悪性腫瘍(頸部を含む。) 手術なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病 あり 76 13.41 14.75 0.00 66.57
060020xx02xxxx 胃の悪性腫瘍 胃切除術 悪性腫瘍手術等 74 11.05 18.01 0.00 72.04
060050xx02xxxx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。) 肝切除術 部分切除等 61 13.20 14.28 0.00 69.56

当科においては、主に消化器の外科治療を担当させていただいております。対象となる疾患としては胃、食道、小腸、大腸、直腸、肝臓、膵臓、胆嚢胆管の悪性腫瘍(癌や肉腫)が中心となります。胃の悪性腫瘍で進行癌が疑われる場合は、腹腔鏡下手術での試験開腹術により、画像では捉えられない変化もしっかりと見極めた上で治療方針を決定しています。また、大腸や直腸の癌においてはその病状に応じて、抗がん剤による化学療法や放射線治療と外科治療を組み合わせた治療法を行い、その治療成績の向上を目指しております。また、肝臓や胆道の癌に対しては外科手術が最も治療成績が良いことから、進行癌に対してもできる限り手術を行っております。その他にも膵臓癌や肝門部領域胆管癌などへも化学療法と外科治療を組み合わせ、他院では手術が困難と判断された患者さんに対しても積極的な外科手術を行って、治療成績の向上を目指しております。
一方、鼠径ヘルニアや胆石症など、普段の生活に支障を来すような病気に対しても丁寧にそれぞれの症例ごとに適切な治療法を行い、患者様の生活の質の向上を目指しております。

泌尿器科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110080xx991xxx 前立腺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1 あり 189 3.01 2.44 0.00 71.76
11022xxx01xxxx 男性生殖器疾患 精索捻転手術等 172 2.42 3.69 0.00 28.23
110070xx03x20x 膀胱腫瘍 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 手術・処置等2 2あり 定義副傷病 なし 128 6.21 6.59 0.00 74.06
11012xxx02xx0x 上部尿路疾患 経尿道的尿路結石除去術 定義副傷病 なし 109 4.97 5.22 0.92 62.92
110080xx01xxxx 前立腺の悪性腫瘍 前立腺悪性腫瘍手術等 107 10.36 11.19 0.00 69.76
循環器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050070xx01x0xx 頻脈性不整脈 経皮的カテーテル心筋焼灼術 手術・処置等2 なし 456 4.90 4.57 0.00 67.32
050210xx97000x 徐脈性不整脈 手術あり 手術・処置等1 なし、1,3あり 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 129 9.47 9.77 0.00 76.01
050130xx9900x0 心不全 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし 他の病院・診療所の病棟からの転院以外 113 19.56 17.38 8.85 78.61
050050xx9910x0 狭心症、慢性虚血性心疾患 手術なし 手術・処置等1 1あり 手術・処置等2 なし 他の病院・診療所の病棟からの転院以外 98 3.69 3.05 0.00 69.83
050050xx9920x0 狭心症、慢性虚血性心疾患 手術なし 手術・処置等1 2あり 手術・処置等2 なし 他の病院・診療所の病棟からの転院以外 94 4.30 3.25 1.06 73.23

狭心症・心筋梗塞・下肢動脈閉塞
カテーテルによるステント留置術や外科手術によるバイパス手術で治療します。
最先端のデバイス(道具)、技術を駆使して県内トップクラスの件数・成績です。

不整脈
薬物治療とカテーテル治療があります。カテーテル治療では、最先端のクライオバルーン、ホットバルーン、レーザーバルーンを用いて県内トップクラスの件数・成績です。

弁膜症
大動脈弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全症が代表的疾患です。
外科手術に加えて、手術リスクの高い患者様には低侵襲のカテーテルによる大動脈弁置換術(TAVI)、僧帽弁形成術(Mitra-Clip)を施行しています。TAVIとMitra-Clipの両方施行できる施設は、埼玉県内では当施設を含め3施設のみです。

心不全
心臓の動きが悪くなって息が苦しくなったり、体がむくんだりする状態を心不全といいます。最新の薬物治療に加えて、ペースメーカによる心臓再同期療法、体外式人工心臓など、最先端の機器も使用しています。

心臓リハビリテーション
心臓病再発予防には心臓リハビリテーションが重要です。当施設では、入院中から外来まで、心臓リハビリテーションを継続できるシステムが整っています。

産科婦人科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
12002xxx99x40x 子宮頸・体部の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病 なし 123 5.68 4.18 0.00 57.67
12002xxx01x0xx 子宮頸・体部の悪性腫瘍 子宮悪性腫瘍手術等 手術・処置等2 なし 118 14.08 10.10 0.00 58.03
12002xxx02x0xx 子宮頸・体部の悪性腫瘍 子宮頸部(腟部)切除術等 手術・処置等2 なし 84 2.20 2.96 0.00 42.49
120070xx01xxxx 卵巣の良性腫瘍 卵巣部分切除術(腟式を含む。) 開腹によるもの等 80 10.26 9.68 0.00 56.53
120060xx01xxxx 子宮の良性腫瘍 子宮全摘術等 72 9.42 9.23 0.00 45.76
整形外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
07040xxx01xxxx 股関節骨頭壊死、股関節症(変形性を含む。) 人工関節再置換術等 190 17.98 19.55 4.74 67.07
070230xx01xxxx 膝関節症(変形性を含む。) 人工関節再置換術等 91 21.66 21.96 6.59 74.11
160620xx01xxxx 肘、膝の外傷(スポーツ障害等を含む。) 腱縫合術等 73 7.48 13.04 0.00 30.85
070343xx01x0xx 脊柱管狭窄(脊椎症を含む。) 腰部骨盤、不安定椎 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。) 前方椎体固定等 手術・処置等2 なし 52 18.96 19.94 9.62 71.29
070180xx97xxxx 脊椎変形 手術あり 49 15.47 21.46 8.16 31.59
耳鼻咽喉・頭頸部外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
030350xxxxxxxx 慢性副鼻腔炎 113 6.19 6.02 0.00 51.10
030150xx97xxxx 耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺の腫瘍 手術あり 103 7.19 6.74 0.00 55.93
03001xxx0200xx 頭頸部悪性腫瘍 頸部悪性腫瘍手術等 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし 58 15.52 12.84 0.00 72.33
030240xx99xxxx 扁桃周囲膿瘍、急性扁桃炎、急性咽頭喉頭炎 手術なし 56 7.21 5.51 0.00 41.52
030440xx01xxxx 慢性化膿性中耳炎・中耳真珠腫 鼓室形成手術 53 6.25 6.76 0.00 46.92

診療科別症例数トップ5

  1. 慢性副鼻腔炎
  2. 耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺の腫瘍 手術あり
  3. 頭頸部悪性腫瘍 頭頸部悪性腫瘍手術等 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし
  4. 扁桃周囲膿瘍、急性扁桃炎、急性咽喉頭炎 手術なし
  5. 慢性化膿性中耳炎・中耳真珠腫 鼓室形成手術

市民向け解説
当科では耳、鼻、咽喉頭、頭頸部全般にわたる幅広い疾患に対応しております。手術加療が必要な疾患の中では慢性副鼻腔炎、慢性化膿性中耳炎、真珠腫性中耳炎が多く、なかでも中耳炎に対する手術では入院期間(平均在院日数)は6.25日であり、全国平均6.76日より短い入院期間となっています。慢性副鼻腔炎に対する手術では入院期間が6.19日と全国平均とほぼ同等ですが、術後の感染や再出血による再入院はほとんど認めておりません。慢性副鼻腔炎や中耳炎以外では頭頸部腫瘍に対する治療の依頼が飛躍的に増加している状況です。
また、手術加療以外の疾患にも対応しており、当科では急性扁桃炎、扁桃周囲膿瘍をはじめとする炎症性疾患の入院症例も多い状況です。急性扁桃炎では入院のうえ抗菌薬の点滴加療を行いますが、扁桃周囲膿瘍では穿刺または切開による排膿が必要であり、重症例の受け入れが多いため平均の入院期間は7.21日と全国平均よりやや長い入院期間なっています。
通院の簡便さや時間的な制限の緩和を目的に地域の診療所や病院と積極的な地域連携を強化しており、退院後の通院先を紹介することが可能な体制を整えております。

呼吸器・アレルギー内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx99200x 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1 2あり 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 219 3.53 2.98 0.00 71.42
040040xx99040x 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病 なし 85 12.66 8.33 0.00 70.40
040110xxxxx0xx 間質性肺炎 手術・処置等2 なし 61 27.87 18.65 4.92 71.72
030250xx991xxx 睡眠時無呼吸 手術なし 手術・処置等1 あり 47 2.00 2.03 0.00 60.40
040040xx99041x 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病 あり 37 21.03 13.90 0.00 73.97

当科では肺がんを含めた多くの肺疾患の診療を行なっています。最も多い肺がんの診断検査として、気管支内視鏡検査を年間300例以上行っています。安全のために入院での検査を原則としていますが、気管支内視鏡検査の在院日数は概ね3日程です。肺がんと診断され化学療法(抗がん剤治療)を行う場合、最初は入院での治療を行います。化学療法後の副作用を確認し(平均在院日数13日)、2コース(回)目以降は外来通院での化学療法も行っています。治療薬剤の変更が必要となった場合には、新たな薬剤(抗がん剤)の導入を入院にて行います。胸水貯留や食事摂取困難、呼吸困難、疼痛、転移による症状など、がんによる病状の進行を認めた場合にも入院治療を行っています。そして当科では地域の関連施設との連携を積極的に行い、個々の患者さんに対して最適な医療を地域の病院と共に行っています。

2024年9月20日
呼吸器・アレルギー内科 福島康次

小児科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050200xx99xxxx 循環器疾患(その他) 手術なし 92 2.82 7.40 0.00 12.89
080270xxxx1xxx 食物アレルギー 手術・処置等1 あり 64 1.02 2.12 0.00 4.03
140010x199x0xx 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(2500g以上) 手術なし 手術・処置等2 なし 55 7.91 6.07 0.00 0.00
040090xxxxxxxx 急性気管支炎、急性細気管支炎、下気道感染症(その他) 50 7.02 5.96 0.00 1.16
040070xxxxx0xx インフルエンザ、ウイルス性肺炎 手術・処置等2 なし 47 6.49 5.86 0.00 3.49

小児の入院患者数がもっとも多いのは起立性調節障害の診断のための起立試験です。起立性調節障害は朝起きられない、全身倦怠感、頭痛などの原因として思春期のお子さんに多い病気です。正しい診断にあわせて治療をすることで症状が改善します。2番目に多いのは食物経口負荷試験の検査入院です。食物アレルギー患者さんは最近増加しています。アレルギーの原因となる食物を食べて、じんま疹、顔の腫れ、咳や嘔吐がみられます。時に、喘鳴や呼吸困難、血圧低下などアナフィラキシーという重症な症状がでることがあります。治療の基本は、正しい診断に基づいてアレルギーの原因となる食物だけを食べないようにする「最小限の食物摂取除去」です。正しい診断のためには食物経口負荷試験が必要です。
当院は地域周産期母子医療センターを併設して、早産低出生体重児、呼吸障害やチアノーゼを呈する正期産児、外科疾患、脳外科疾患、様々な先天異常などの新生児をみており、東部エリアにおける中心的な新生児医療施設です。最近、感染症の入院も増えています。ただのカゼと思っていても入院治療を必要とする場合があります。

小児科 松原知代

糖尿病内分泌・血液内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
10007xxxxxx1xx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。) 手術・処置等2 1あり 207 12.18 13.99 0.48 65.55
130030xx99x9xx 非ホジキンリンパ腫 手術なし 手術・処置等2 9あり 59 15.61 12.88 0.00 70.32
10006xxxxxx1xx 1型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。) 手術・処置等2 1あり 35 13.23 13.31 0.00 60.66
100180xx990x0x 副腎皮質機能亢進症、非機能性副腎皮質腫瘍 手術なし 手術・処置等1 なし 定義副傷病 なし 34 4.91 6.46 0.00 55.62
130030xx97x50x 非ホジキンリンパ腫 手術あり 手術・処置等2 5あり 定義副傷病 なし 33 28.64 29.83 0.00 65.58

当科は糖尿病内分泌疾患と血液疾患の診療を担当していますが、入院される患者さんは糖尿病では1型および2型糖尿病、内分泌疾患では副腎腫瘍が多くを占めています。今や我が国において糖尿病および糖尿病が疑われる人は約5人に1人と極めて多くなっています。また30歳以上の男性の約3割、40歳以上の女性の約2割は肥満であり、肥満者は急激に増えています。したがって肥満を主たる原因とし、インスリン抵抗性(体から分泌されるインスリンの効き目が悪い)による2型糖尿病が近年増加の一途にあり、当科の入院患者さんとしても年々増えています。実際当科の年間の糖尿病の外来患者さんの延べ数は6000名を超え、常時20名程度の糖尿病患者さんが入院されています。
糖尿病治療は最初が肝心です。当科では、未治療の2型糖尿病で入院した患者さんの血糖状態を24時間持続血糖モニタリングなどを用いて正確に把握し、高血糖状態をインスリン治療によってなるべく早く是正します。そして退院時にはインスリンを卒業し、なるべく経口薬(飲み薬)のみで治療できるようにしていきます。
また当科では医師、看護師、薬剤師、管理栄養士および臨床検査技師が一体となって糖尿病教室を開き、患者さんの教育にあたっております。特に独自のエクササイズプログラムを用いた運動療法は全国的にも有名で、当科の糖尿病教室の特色です。退院後も食事運動療法を継続できるように指導いたします。
一方で、主に自分の免疫の仕組みが、インスリンを産生、分泌する膵のβ細胞を攻撃してしまうためにインスリン分泌が減少、枯渇することで発症する1型糖尿病の患者さんにはインスリン治療が不可欠です。治療としては毎食直前の超速効型インスリンと、1日一回の持効型インスリンの合計1日4回の自己注射を行う強化インスリン療法が一般的ですが、インスリンを持続的に皮下に注入するインスリンポンプによる治療も当科では積極的に行っています。最近のインスリンポンプの進化は目覚ましく、24時間持続血糖モニタリングと連動して、自動的にインスリンの注入量を調節する新しいインスリンポンプも使えるようになりました。このような最新技術による「インスリン注射の自動運転」とも言えるインスリンポンプはまさに1型糖尿病患者さんへの福音であり、当科でも精力的に導入しています。

さらに最近のCTやMRIなどの画像診断の進歩により、偶然に副腎腫瘍が見つかるケースが多くなっています。また高血圧の患者さんへの二次性高血圧症、特に原発性アルドステロン症のスクリーニングが、かかりつけ医の先生方にも浸透してきたため、副腎腫瘍、原発性アルドステロン症疑いの患者さんをご紹介いただくことが増えています。副腎腫瘍特に原発性アルドステロン症については、当科は全国的にも多くの診療実績を持っています。各種内分泌負荷試験を行うことで診断し、放射線科とタイアップして副腎静脈サンプリングを行い、手術の場合は当院の泌尿器科で行うという円滑な診断治療ラインが確立しています。

血液疾患では急性白血病および高齢化社会に伴って、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)の患者さんが入院患者さんの上位を占めています。血液疾患は、近年新規薬剤(特に分子標的薬)の進歩が目覚ましく、その治療成績も飛躍的に向上しています。当科では無菌治療室(クリーンルーム)も6床稼動し、急性白血病および悪性リンパ腫などに対する化学療法に必要な環境も完備しています。さらに大量抗がん剤治療を安全に行うことを可能にする自家末梢血幹細胞移植も2021年4月から始まっており、症例も着実に増加しています。また放射線治療も当院放射線科との密接な連携の下に行っています。

糖尿病内分泌・血液内科 診療部長 橋本 貢士

腎臓内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110280xx9900xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし 154 5.92 11.49 1.30 46.23
110280xx03x0xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 内シャント血栓除去術等 手術・処置等2 なし 73 2.08 4.51 0.00 69.55
110280xx991xxx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1 あり 68 6.99 6.44 0.00 45.44
110260xx99x3xx ネフローゼ症候群 手術なし 手術・処置等2 3あり 47 4.11 4.65 0.00 47.23
110280xx9902xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 2あり 39 7.90 8.09 0.00 60.21
脳神経外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
010030xx9910xx 未破裂脳動脈瘤 手術なし 手術・処置等1 あり 手術・処置等2 なし 87 3.16 2.95 0.00 61.00
010010xx03x00x 脳腫瘍 頭蓋内腫瘍摘出術等 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 47 24.64 20.70 14.89 60.79
010030xx03x0xx 未破裂脳動脈瘤 脳血管内手術 手術・処置等2 なし 43 7.16 8.94 0.00 60.84
010050xx02x00x 非外傷性硬膜下血腫 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術等 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 37 10.30 11.87 10.81 79.97
160100xx99x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 25 20.40 8.38 24.00 63.60
皮膚科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
080006xx01x0xx 皮膚の悪性腫瘍(黒色腫以外) 皮膚悪性腫瘍切除術等 手術・処置等2 なし 165 6.45 7.22 0.00 77.52
080007xx010xxx 皮膚の良性新生物 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)等 手術・処置等1 なし 106 5.09 3.93 0.00 52.35
080010xxxx0xxx 膿皮症 手術・処置等1 なし 32 15.22 12.88 3.13 60.53
080006xx97x0xx 皮膚の悪性腫瘍(黒色腫以外) その他の手術あり 手術・処置等2 なし 25 17.40 9.40 0.00 77.80
070010xx970xxx 骨軟部の良性腫瘍(脊椎脊髄を除く。) その他の手術あり 手術・処置等1 なし 16 5.25 4.28 0.00 50.50
脳神経内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
010110xxxxx4xx 免疫介在性・炎症性ニューロパチー 手術・処置等2 4あり 35 25.97 16.97 14.29 64.03
010230xx99x00x てんかん 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 26 8.08 7.19 7.69 41.81
010080xx99x0x1 脳脊髄の感染を伴う炎症 手術なし 手術・処置等2 なし 15歳以上 25 15.92 16.56 8.00 59.64
010130xx99x0xx 重症筋無力症 手術なし 手術・処置等2 なし 25 12.64 11.67 0.00 64.48
010090xxxxx0xx 多発性硬化症 手術・処置等2 なし 23 19.35 13.69 4.35 42.04
  1. 免疫介在性・炎症性ニューロパチー 手術・処置等24 あり
  2. てんかん 手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病名 なし
  3. 脳脊髄の感染を伴う炎症 手術なし 手術・処置等2なし 15歳以上
  4. 重症筋無力症 手術なし 手術・処置等 24 あり
  5. 多発性硬化症 手術・処置等2 なし
  1. 免疫介在性・炎症性ニューロパチーの代表はギランバレ一症候群です。上・下肢からしびれや筋力低下が始まり徐々にその範囲が拡大します。肩や腰の激痛を伴うこともあります。症状が進行すると四肢麻痺、歩行困難、嚥下困難、呼吸困難を来します。病気の部位は末梢神経であるため CTあるいはMRI 検査などの画像検査では診断できず、神経診察や脳脊髄液検査、電気生理検査が必要です。早期治療とリハビリテーションによって早期社会復帰を目指します。
  2. てんかんは、てんかん発作を繰り返す脳の病気で、年齢、性別、人種の関係なく発病します。てんかんの原因は様々で脳出血や脳梗塞、アルツハイマーなどの病気・出産時のトラブルなどによる脳障害・ウイルスや細菌による感染症・遺伝子の変異・先天的な代謝異常・自己免疫の異常・原因不明の場合もあります。問診、脳波検査、画像検査(MRI・CT)を用いて診断していきます。薬物療法を中心に治療を行います。難治性のてんかんの場合などは、てんかんセンターへ紹介する場合もあります。
  3. 脳脊髄の感染症は神経救急分野の一つであり、早急な診断と適切な治療が必要であるためその救急受け入れに対応しております。
  4. 重症筋無力症は瞼が下がる、ものが二重にみえる、四肢の筋力低下がみられ、さらに飲み込みが悪くなったり、呂律が回りにくくなったりすることがあります。病変部位は神経筋接合部であるため、薬による反応をみるテストや電気生理検査が必要です。基本的には免疫療法になりますが、胸腺腫がある方は呼吸器外科と相談し手術を行うことがあります。
  5. 多発性硬化症は、視力障害、感覚障害、運動麻痺などさまざまな神経症状の再発と寛解を繰り返す、厚生労働省が指定する自己免疫性脱髄性疾患のひとつです。適切な治療によって、症状が現れなくなる寛解期をむかえます。診断には神経診察や脳脊髄液検査、電気生理検査、MRI検査が必要です。神経症状の早期回復ならびに再発の予防、障害の進行抑制を目的とした薬物療法を中心に行います。
救急医療科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
161070xxxxx00x 薬物中毒(その他の中毒) 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 72 2.47 3.62 6.94 32.68
161070xxxxx1xx 薬物中毒(その他の中毒) 手術・処置等2 1あり 22 5.50 8.53 27.27 49.55
180010x0xxx2xx 敗血症(1歳以上) 手術・処置等2 2あり 22 18.86 31.28 54.55 68.09
180010x0xxx3xx 敗血症(1歳以上) 手術・処置等2 3あり 17 39.41 37.35 23.53 61.41
161060xx99x0xx 詳細不明の損傷等 手術なし 手術・処置等2 なし 16 1.88 2.86 0.00 50.50
乳腺科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
090010xx010xxx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴うもの(内視鏡下によるものを含む。))等 手術・処置等1 なし 190 11.02 9.88 0.53 61.67
090010xx02xxxx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの) 51 4.76 5.64 0.00 60.02
090010xx99x40x 乳房の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 4あり 定義副傷病 なし 35 2.06 3.51 0.00 57.11
100020xx010xxx 甲状腺の悪性腫瘍 甲状腺悪性腫瘍手術 切除(頸部外側区域郭清を伴わないもの)等 手術・処置等1 なし 25 7.64 7.94 0.00 55.72
090010xx99x80x 乳房の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 8あり 定義副傷病 なし 22 2.00 3.55 0.00 57.36

乳癌は増加の一途をたどり、いまや日本人女性の10人に一人が罹患する疾患となりました。ご親族や、ご友人のなかにも乳癌の治療を受けられた方がいると思います。乳癌は、最初の治療が大切です。最初の治療が適切に行われたかどうかで予後まで影響を受けてしまいます。また、乳癌は比較的化学療法(抗癌剤)が効果的である癌です。このため、手術に先行して化学療法を行い、腫瘍を小さくしてから手術を行う場合があります。さらに、手術を終了してから、再発を予防するために抗癌剤を投与する場合があります。いずれのケースも予後を伸ばす効果が確認されています。このように、手術に加えて抗癌剤治療を多く行う診療科でもあり、化学療法が治療頻度の上位をしめています。

小児外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
140590xx97xxxx 停留精巣 手術あり 109 2.46 2.97 0.00 2.19
060160x101xxxx 鼠径ヘルニア(15歳未満) ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等 67 2.57 2.75 0.00 4.19
11022xxx01xxxx 男性生殖器疾患 精索捻転手術等 19 2.47 3.69 0.00 4.68
060170xx02xx0x 閉塞、壊疽のない腹腔のヘルニア ヘルニア手術 腹壁瘢痕ヘルニア等 定義副傷病 なし 15 2.47 6.86 0.00 3.60
060380xxxxx0xx ウイルス性腸炎 手術・処置等2 なし 13 4.77 5.64 0.00 11.62
  1. 停留精巣

    精巣が、お腹の中や、足の付けねに止まってしまい、おちんちんの袋(陰のう)まで落ちてこないことを停留精巣と言います。袋にあったり、触れなくなったりするのを、遊走精巣と言います。

    精巣は、妊娠7ヶ月でお腹の中から袋に下降します。しかし、生まれてすぐの赤ちゃんの5%に停留精巣が認められますが、7割は自然に治ります。生後6か月以降になると、自然に治ることは極端に少なくなります。停留精巣を放置すると、不妊症の原因となりますが、正しい位置に精巣を固定する手術を行うことで、危険性が半減します。遊走精巣は、精子を作る能力に異常が生じず、成長とともに自然に袋に収まってしまうことも多いのですが、まれに停留精巣となってしまうことがあるため定期的な診察が必要です。

    獨協医科大学埼玉医療センターでは、精巣に詳しい小児泌尿器科医や小児外科医が診療にあたり、生後6か月以降から、遅くとも2歳までには手術行います。術後も将来まで精巣の機能に問題がでないか経過を診ますので安心して受診してください。

  2. 鼠径ヘルニア

    小児外科で扱う疾患の中で最も多いもののひとつです。腹膜が足の付け根(鼠径部)に袋状になって突出しているところに、腸管や卵巣(女児)が脱出するため、同部位が膨らんで見えることで異常に気がつきます。脱出臓器が袋に入り込んで戻らなくなり(嵌頓)ねじれたりむくんだりすることによって、血流が少なくなり、臓器が壊死してしまうことがあるので、見つけたら早めの手術が必要とされます。

  3. 男性生殖器疾患

    尿道下裂や水腎症等の小児泌尿器疾患に対して小児泌尿器科と協力し診療しています。また、小児急性陰嚢症(精索捻転や精巣炎、精巣上体炎等)の救急疾患にも対応しています。精索捻転では精巣、精巣上体の急激な血行障害から、放置すると梗塞、壊死をきたします。緊急手術を要する疾患です。

  4. 閉塞、壊死のない腹腔のヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニア、白線ヘルニア、臍ヘルニア

    腹壁ヘルニアとは、前腹壁あるいは側腹壁の筋膜の一部が欠損し、同部より腹部内臓器(主として腸管)が腹膜に包まれて皮下に脱出した状態です。
    腹壁瘢痕ヘルニアは開腹手術創部の瘢痕部に発生したヘルニアを言います。

    白線ヘルニアは白線に一致した欠損部から主として腹膜周囲の脂肪組織塊が脱出したもので、臍上部に多く認めます。

    臍ヘルニアは臍輪が完全に閉鎖しない場合に起こります。生後2~3週以降、臍帯脱落後に細部が膨隆してくることが多い。ヘルニア内容は腸管であり、啼泣時に膨隆し、安静時に指で圧迫すると容易に還納される。多くは生後2~3か月にヘルニアの大きさは最大となり、その後縮小し、大半は生後6か月頃までに膨隆を認めなくなります。小児の臍ヘルニアは自然治癒する可能性が高く、腹筋の発達とともに1才頃までには約80%、2歳頃までには約90%が自然治癒するとされていますが、それ以降は自然治癒の可能性は少なく、手術を施行します。

    乳児期早期の絆創膏による圧迫固定が自然治癒の促進や臍突出症の予防に効果が認められるため、乳児期の症例ではまず圧迫固定を施行します。

  5. 急性胃腸炎

    急性胃腸炎は、感染などが原因で胃もしくは腸粘膜に炎症をきたしている状態です。乳幼児に多く認められるウイルス感染に起因する乳児下痢症と、学童以降に増加する細菌感染が原因の細菌性腸炎に大別されます。

    乳児下痢症はロタウイルス、アデノウィルス、ノロウイルスなどのウイルス感染が原因となります。ウイルスに感染すると、腸粘膜に炎症が起こり、水分や電解質の吸収能力が低下します、一方粘液の分泌が亢進し下痢となります。また、糖質などの吸収不全に伴う浸透圧性下痢をきたし水溶性下痢が続くこともあります。症状は突然の嘔吐から始まることが多く、その後、酸臭を帯びた淡黄色ないし白色水様便が、多いときは1日に10回以上出現します。冬季に流行することが多いです。

    細菌性腸炎は、カンピロバクター、サルモネラ、病原大腸菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌などの細菌感染が原因となります。いずれも、食物が十分に調理されていない場合や料理人の手洗いがきちんとなされていない際に感染します。腹痛、発熱、血便で始まるものが多いです。腹痛は比較的強く、腸の動きが悪くなり、腹部が膨満することもあります。発熱は細菌感染に伴い持続します。便に血液、粘液、濃などが混入することもあります。

    いずれも虫垂炎との鑑別が必要となります。小児の虫垂炎は腹痛、嘔吐、発熱などを主症状とする虫垂の化膿性炎症性疾患です。学童期のこどもに多く見られる病気ですが、2-3歳の幼児にもみられるため注意が必要です。最初はおへその周りや上のほう(胃のあたり)を痛がり、1-2日で痛みが右の下腹部へ移動するのが虫垂炎に特徴的な腹痛です。

    痛みのためお腹を抱えて前かがみで歩いたり、ジャンプすると右下腹部の痛みが強くなるなどの特徴があります。こどもの虫垂炎は穿孔し、腹膜炎に進行しやすいといわれます。進行しないうちに手術(虫垂切除術)をするのが最も確実で、効果的な治療法です。ただし、すでに穿孔し大きな塊や膿瘍を作っている場合には、抗菌剤で治めてから3-4ヵ月後に待機的虫垂切除術を行います。また最近では、炎症や腹痛が強くない場合、抗菌剤のみで炎症を抑えて手術をしないという選択肢もあります。

呼吸器外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx97x00x 肺の悪性腫瘍 その他の手術あり 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 186 10.89 9.89 0.00 71.70
040200xx01x00x 気胸 肺切除術等 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 28 10.71 9.54 0.00 38.68
040020xx97xxxx 縦隔の良性腫瘍 手術あり 18 8.28 7.58 0.00 61.44
040040xx99200x 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1 2あり 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 17 3.06 2.98 0.00 74.71
040150xx97x00x 肺・縦隔の感染、膿瘍形成 手術あり 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 12 14.17 28.24 8.33 70.00

肺の悪性腫瘍や気胸に対する手術を目的とした入院が多くなっています。大学病院・総合病院として多種多様な疾患(重症糖尿病、人工透析、慢性心不全など)を持つ方の手術も多く、また気胸では緊急入院後の臨時手術となるため、在院日数が全国平均より1日ずつ長くなっています。
肺・縦隔の感染症は抗生物質やドレナージなどの治療の効果が乏しい場合に手術を行います。内科や近隣の医療機関との連携により外科的治療の介入を計っています。高齢者や合併疾患の多い方では感染による消耗で体力の低下や廃用症候群のため外科治療後にリハビリテーション目的に転院となることもあり、転院率が8.3%となっています。

心臓血管外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050080xx97000x 弁膜症(連合弁膜症を含む。) その他の手術あり 手術・処置等1 なし、1あり 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 52 13.46 12.46 1.92 83.40
050080xx0101xx 弁膜症(連合弁膜症を含む。) ロス手術(自己肺動脈弁組織による大動脈基部置換術)等 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 1あり 46 21.46 21.52 0.00 69.09
050163xx03x0xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤 ステントグラフト内挿術 手術・処置等2 なし 34 9.88 10.42 0.00 78.26
050163xx02x1xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤 大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む。) 腹部大動脈(分枝血管の再建を伴うもの)等 手術・処置等2 1あり 19 18.11 19.20 10.53 74.53
050080xx97010x 弁膜症(連合弁膜症を含む。) その他の手術あり 手術・処置等1 なし、1あり 手術・処置等2 1あり 定義副傷病 なし 16 12.75 15.82 0.00 82.88

弁膜症
心臓弁膜症とは、心臓の中で血液を決まった方向に流すためにある弁の機能が悪くなった病気です。大動脈弁、僧帽弁、三尖弁の3つの弁に多く生じ、狭窄症と閉鎖不全症(逆流)があります。多くは息切れや倦怠感の症状が出ますが、高度の弁膜症では、たとえ症状がなくても手術をした方がいい場合があります。最近では高齢の患者さんの大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全にはカテーテルによる手術も行えるようになってます(当院では年間100例以上)。

大動脈瘤
大動脈が太く拡張した状態を大動脈瘤といいます。自覚症状はほとんどなく、エコー検査やCT検査で偶然発見されることが多い病気ですが、大きくなると破裂して死に至ります。禁煙、血圧の是正が重要ですが、内科的治療では現在のところ進行を止めることができず、根治には外科的な治療しかありません。当院では切らない、カテーテルでの動脈瘤治療に力を入れています。

形成外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160200xx02000x 顔面損傷(口腔、咽頭損傷を含む。) 鼻骨骨折整復固定術等 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし 45 3.84 4.63 0.00 28.60
070010xx010xxx 骨軟部の良性腫瘍(脊椎脊髄を除く。) 四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術等 手術・処置等1 なし 14 5.93 5.14 0.00 51.50
070010xx970xxx 骨軟部の良性腫瘍(脊椎脊髄を除く。) その他の手術あり 手術・処置等1 なし 14 3.71 4.28 0.00 36.71
020230xx97x0xx 眼瞼下垂 手術あり 手術・処置等2 なし 11 2.82 2.82 0.00 65.91
080010xxxx0xxx 膿皮症 手術・処置等1 なし - - 12.88 - -
初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数ファイルをダウンロード
初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 80 42 42 41 151 - 1 8
大腸癌 106 132 85 93 189 24 1 8
乳癌 100 134 47 29 12 32 1 8
肺癌 138 64 154 210 282 29 1 8,7
肝癌 - 21 20 - 59 38 1 8,6
※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約

解説
初発患者は、UICC (国際対がん連合) によって定められたTNM分類に基づいて決定した病期分類による退院患者数を、再発患者 (再発部位によらない) は集計期間内の実患者数を示しています。
TNM分類では、T:原発腫瘍の大きさと浸潤の程度、N:所属リンパ節への転移の有無と拡がり、M:遠隔転移の有無を評価します。そして、これらを総合的に組み合わせて病期をStage I~Stage IVに分類します。
TNM 分類が不明確などでStageが決定できなかった場合は、「不明」と記載しました。
一連の治療で、集計期間内に複数回入院しても、1例として集計しています。

胃癌・大腸癌・肝癌
消化器内科と外科が連携して診療に当たっております。
胃癌は、健康診断等で早期に発見されたStage Iの患者さんが80名いましたが、一方、Stage Ⅲになってから診断された患者さんも42名と多かったです。
大腸癌は、Stage Ⅲ~IVで診断された患者さんが多かったです。
肝癌は、常にStage不明の患者さんが多い傾向にあります。

乳癌
乳腺科で診療しています。我が国の乳癌の罹患率は年々増加しています。乳癌は早期に発見され適切な治療を受ければ予後は良好です。このため乳癌検診はぜひ受けてください。自己触診でも異常を感じたらかかりつけ医に受診してください。当科ではStageⅠとⅡで80%を占め、次いで局所進行乳癌のStage Ⅲが10%程度の頻度で見られました。いずれも手術に加えて化学療法や分子標的治療が行われています。遠隔転移があるStage Ⅳおよび再発も一定数発生しています。これらの方も化学療法などで治療を継続しています。薬物療法は様々なタイプの乳がんに最適な薬剤を選択し最新の治療を行っています。
高リスクに該当する方は遺伝子検査が保険適応となっていますので遺伝子診断をお勧めしています。当院は、遺伝性乳癌卵巣がんリスクの遺伝子診断、予防的治療が実施できる施設認定がなされています。このため遺伝子変異のある乳癌患者さんには、対側の予防的乳房切除も実施しています。

肺癌
日本人の「がん」による死亡原因の第1位が肺癌です。肺癌の診療は呼吸器・アレルギー内科と呼吸器外科、そして放射線科が連携して診療しております。
令和5年度、肺癌診断時のStageはⅠ期:138人、Ⅱ期:64人、Ⅲ期:154人、Ⅳ期:210人でした。このように診断時、既にStageⅢ~Ⅳ期の進行癌(手術による治療が困難)であった患者さんが多く、がん検診や人間ドックなどで早期に発見することが重要です。再発患者数は29人で昨年よりも減少しています。

成人市中肺炎の重症度別患者数等ファイルをダウンロード
患者数 平均
在院日数
平均年齢
軽症 23 14.09 58.87
中等症 95 19.45 76.66
重症 13 22.46 78.54
超重症 - - -
不明 - - -

「肺炎」は日本人の死亡原因の第5位[1位:悪性新生物(がん)、2位:心疾患、3位:老衰、4位:脳血管疾患、5位:肺炎、6位:不慮の事故、7位:誤嚥性肺炎]ですが、7位の誤嚥性肺炎を「肺炎」に含めると死亡原因の第3位となり、特に高齢者の肺炎が増加しています。通常の社会生活を送っている中で発症する肺炎を「市中肺炎」と言います。市中肺炎は抗菌薬による治療反応性や病気の予後(改善しやすさ)によって軽症、中等症、重症、超重症の4段階に分類されます。令和5年度の肺炎による患者数/入院日数/平均年齢は軽症:23人/14日/59歳、中等症:95人/20日/77歳、重症:13人/22日/78歳でした。
肺炎は早期に発見し治療を開始することが大切ですが、予防ワクチン(新型コロナワクチン、インフルエンザワクチン、RSウイルスワクチン、肺炎球菌ワクチン)接種を行なって、肺炎の発症を積極的に予防することや、入院早期からリハビリテーションを開始することで体力を保持し、廃用性障害による身体活動性の低下を防ぐことも大切です。

2024年9月20日
呼吸器・アレルギー内科 福島康次

脳梗塞の患者数等ファイルをダウンロード
発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
3日以内 144 24.87 73.11 35.76
その他 21 30.57 69.76 3.64
診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
眼科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K2821ロ 水晶体再建術(眼内レンズを挿入)(その他) 1418 0.55 1.26 0.00 75.05
K2801 硝子体茎顕微鏡下離断術(網膜付着組織を含む) 等 578 0.60 3.39 0.00 63.29
K2802 硝子体茎顕微鏡下離断術(その他) 等 115 0.63 3.61 0.87 62.42
K2821イ 水晶体再建術(眼内レンズを挿入)(縫着レンズ挿入) 60 0.35 1.82 0.00 73.20
K2682イ 緑内障手術(流出路再建術)(眼内法) 50 0.50 1.80 0.00 70.98

当院では、白内障手術、緑内障手術および網膜硝子体手術を数多く行っています。白内障手術に関しては、日帰りあるいは入院で対応しています。緑内障に対しては、流出路再建術、濾過手術、チューブシャント手術、毛様体パルスレーザーなどの多くの術式を行っています。また、非常に多くの網膜硝子体手術を行っています。特に、難治性の網膜硝子体疾患にも対応いたします。

消化器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 長径2センチメートル未満 等 272 0.30 1.13 0.00 68.36
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 212 1.18 6.91 2.36 75.21
K6532 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 早期悪性腫瘍胃粘膜下層剥離術 132 0.14 5.83 0.00 74.23
K721-4 早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術 117 0.26 5.46 0.00 71.26
K7212 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 長径2センチメートル以上 等 85 0.07 1.32 0.00 61.98

診療科別主要手術トップ5

  1. 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2㎝未満)
    内視鏡検査にて大腸ポリープを切除する手技です。大腸ポリープ下の粘膜に液体を注入して膨らませてポリープを持ち上げます。その後、スネアという金属製のリングをポリープにかけて、通電しながらポリープを切除します。通称EMR(内視鏡的粘膜切除術)と呼ばれます。ポリープのサイズが小さい(10mm未満)に対しては、通電させずスネアだけで切除することが可能です。切除したポリープのほとんどは、内視鏡で吸って回収することが可能です。ポリープを切除した後は、傷口にクリップという金属をかけて出血を予防します。
  2. 内視鏡的胆道ステント術
    ERCP(内視鏡的逆行性膵胆管撮影法)は、主に胆管が狭くなったり、閉塞することで生じる閉塞性黄疸や胆管炎の病気の原因検索や治療目的に行われます。内視鏡スコープを口から十二指腸へ進めて、ファーター乳頭という胆管の入り口を探します。ファーター乳頭から細いチューブを胆管に挿入して、造影剤を流して胆管全体を観察します。胆管が狭くなっている原因を検索した後、ステントというプラスチックのチューブを胆管に留置します。流れなくなった胆汁が、ステントを通って十二指腸に排泄されることで、黄疸や胆管の炎症が改善します。ステントは体内に留置されるため、外から目立ちません。病状によっては金属製のチューブを胆管に留置することがあります。
  3. 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術(早期悪性腫瘍粘膜下層)
    胃内に発生した腺腫(良性腫瘍)や腺癌(悪性腫瘍)に対してESD(内視鏡的胃粘膜剥離術)が行われます。ESDは内視鏡スコープから特殊なナイフを出して、胃の腫瘍を切除する治療です。胃癌は開腹や腹腔鏡手術で治療されることが多いですが、癌の浸潤が浅い場合はESDの適応となります。内視鏡検査で胃は切らずに腫瘍のみ切除するため、開腹や腹腔鏡手術と比較すると体の負担は少ないです。術後の食事も早く開始することが出来ます。
  4. 早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術
    大腸内に発生した腺腫(良性腫瘍)や腺癌(悪性腫瘍)に対してESD(内視鏡的胃粘膜剥離術)が行われます。EMR(内視鏡的粘膜切除術)という金属製のスネアを用いた切除方法が行われることが多いですが、腫瘍の中にはサイズが2㎝を超える大きなものや、平坦に広がっていて、スネアに入りきらない場合があります。そのような腫瘍に対してESDによる切除が検討されます。ESDは内視鏡スコープから特殊なナイフを出して、大腸の腫瘍を切除する治療です。大腸癌は開腹や腹腔鏡手術で治療されることが多いですが、癌の浸潤が浅い場合はESDの適応となります。内視鏡検査で大腸は切らずに腫瘍のみ切除するため、開腹や腹腔鏡手術と比較すると体の負担は少ないです。術後の食事も早く開始することが出来ます。
  5. 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2センチメール以上)
    内視鏡にて大腸ポリープを切除する手技です。一般的には20mm未満のポリープでは金属製のスネアを用いてEMR(内視鏡的粘膜切除術)と呼ばれる方法で切除し、20mm以上の際はESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)と呼ばれる方法で切除します。ESDに比べてEMRのほうが体への負担は少なく、20mm以上であってもスネアで安全に一括切除を行えると判断した際にはEMRでの切除を行います。日帰りの事もありますが1泊もしくは2泊の入院で行うことが多いです。
外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K719-3 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 等 141 3.38 11.95 0.71 71.07
K6335 鼠径ヘルニア手術 等 90 1.38 1.32 0.00 75.08
K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術 78 1.35 3.74 0.00 64.72
K6113 抗悪性腫瘍剤静脈内持続注入用植込型カテーテル設置(頭頸部その他) 62 0.63 4.29 0.00 67.42
K740-21 腹腔鏡下直腸切除・切断術(切除術) 等 51 2.53 15.22 1.96 70.02

当科の手術は消化器の悪性腫瘍に対する手術が中心となります。そのため、結腸や直腸、胃の切除術が多くなっています。この様な臓器の手術では、できる限り患者様の負担を軽減するため、腹腔鏡下手術を積極的に取り入れています。現在では8割以上の患者様に腹腔鏡下手術を適応としています。その中でも手術支援ロボットを使用したロボット支援下手術を積極的に取り入れ、埼玉県下でも最も症例数が多く、日本の中でも上位の手術数を誇っています。肝臓や膵臓の手術にもこの技術を使用してロボット支援下手術数が増加しています。これにより、患者様への手術の侵襲を軽減し、術後の早期回復、手術日数の短縮、早期の社会復帰に全力で取り組んでいます。また、肝臓、胆道、膵臓の手術においては最先端の技術を取り入れ、進行癌でも外科手術を行うよう、心がけています。特に門脈に代表されるような血管への浸潤例でも合併切除を安全に行うことで、他院にて手術が難しいと言われた症例にも外科手術を行っています。
鼠径ヘルニアや胆石症といった一般的な疾患に対しても多くの手術を行っています。ヘルニアに対してはメッシュを使って再発が少なく、また、術後の違和感の少ない手法を用いています。胆石症ではそのほとんどを腹腔鏡下手術で行っていますし、また、炎症が強くその治療に難渋する症例も多く他院などからの紹介を受けていますので、その症例にあわせた適切な治療法で患者様の早期の回復を心がけています。

整形外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0821 人工関節置換術(股) 等 280 1.36 16.93 6.79 69.39
K1422 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(後方又は後側方固定) 53 6.00 21.58 33.96 67.43
K069-3 関節鏡下半月板縫合術 41 1.15 5.56 0.00 32.80
K0461 骨折観血的手術(大腿) 等 39 3.23 21.21 41.03 63.46
K1425 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(椎弓切除) 等 37 1.84 19.30 16.22 70.49
泌尿器科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術)(電解質溶液利用) 等 224 1.48 4.37 0.45 74.45
K834-3 顕微鏡下精索静脈瘤手術 119 0.00 1.00 0.00 32.87
K843-4 腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いる) 等 108 1.31 8.12 0.00 69.75
K7811 経尿道的尿路結石除去術(レーザー) 等 108 1.22 2.75 0.93 63.03
K783-2 経尿道的尿管ステント留置術 53 1.74 6.34 1.89 60.83
循環器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5951 経皮的カテーテル心筋焼灼術 心房中隔穿刺又は心外膜アプローチを伴うもの 等 387 1.58 2.26 0.00 68.16
K5952 経皮的カテーテル心筋焼灼術 その他のもの 等 81 2.72 3.21 0.00 62.59
K5493 経皮的冠動脈ステント留置術 その他のもの 等 80 2.58 4.09 0.00 69.74
K616 四肢の血管拡張術・血栓除去術 68 1.37 5.76 1.47 75.21
K597-2 ペースメーカー交換術 42 1.60 4.95 0.00 78.31

狭心症・心筋梗塞・下肢動脈閉塞
カテーテルによるステント留置術や外科手術によるバイパス手術で治療します。
最先端のデバイス(道具)、技術を駆使して県内トップクラスの件数・成績です。

不整脈
薬物治療とカテーテル治療があります。カテーテル治療では、最先端のクライオバルーン、ホットバルーン、レーザーバルーンを用いて県内トップクラスの件数・成績です。

弁膜症
大動脈弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全症が代表的疾患です。
外科手術に加えて、手術リスクの高い患者様には低侵襲のカテーテルによる大動脈弁置換術(TAVI)、僧帽弁形成術(Mitra-Clip)を施行しています。TAVIとMitra-Clipの両方施行できる施設は、埼玉県内では当施設を含め3施設のみです。

心不全
心臓の動きが悪くなって息が苦しくなったり、体がむくんだりする状態を心不全といいます。最新の薬物治療に加えて、ペースメーカによる心臓再同期療法、体外式人工心臓など、最先端の機器も使用しています。

心臓リハビリテーション
心臓病再発予防には心臓リハビリテーションが重要です。当施設では、入院中から外来まで、心臓リハビリテーションを継続できるシステムが整っています。

産科婦人科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K877 子宮全摘術 126 1.94 7.77 0.00 54.27
K8981 帝王切開術(緊急帝王切開) 等 94 5.34 7.05 0.00 34.49
K8982 帝王切開術(選択帝王切開) 等 93 4.89 6.91 0.00 34.76
K867 子宮頸部(腟部)切除術 85 0.11 1.12 0.00 42.39
K8882 子宮附属器腫瘍摘出術(両側)(腹腔鏡) 等 69 0.91 4.62 0.00 43.13
耳鼻咽喉・頭頸部外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K3772 口蓋扁桃手術(摘出) 等 74 1.01 6.16 0.00 25.72
K340-6 内視鏡下鼻・副鼻腔手術4型(汎副鼻腔手術) 66 1.26 4.44 0.00 50.21
K340-5 内視鏡下鼻・副鼻腔手術3型(選択的(複数洞)副鼻腔手術) 等 61 1.03 4.08 0.00 57.18
K4571 耳下腺腫瘍摘出術(耳下腺浅葉摘出術) 等 40 1.00 6.00 0.00 56.18
K3191 鼓室形成手術(耳小骨温存術) 等 39 1.31 3.85 0.00 43.10

診療科別主要手術トップ5

  1. 口蓋扁桃手術(摘出)等
  2. 内視鏡下鼻・副鼻腔手術4型(汎副鼻腔手術)等
  3. 内視鏡下鼻・副鼻腔手術3型(選択的(複数洞)副鼻腔手術)等
  4. 耳下腺腫瘍摘出術(耳下腺浅葉摘出術)等
  5. 鼓室形成手術(耳小骨温存術)等

市民向け解説
当科では手術加療が必要な中耳、鼻副鼻腔疾患に対して、より安全で質の高い手術を行うよう努めております。鼻副鼻腔疾患では慢性副鼻腔炎に対する汎副鼻腔手術と選択的複数洞副鼻腔手術が多く、4Kモニターを用いた内視鏡下での手術加療を行っています。術後の平均入院期間はそれぞれ4.44日、4.08日と短いながらも術後合併症はほとんど認めておりません。慢性副鼻腔炎のみならず、頭蓋底におよぶ腫瘍や髄液漏など高度な技術を要する疾患に対しても内視鏡下での手術を行います。
一方、中耳疾患では慢性化膿性中耳炎、真珠腫性中耳炎が大半を占め、内視鏡を併用したより専門性の高い手術を行っています。手術に伴う合併症はほとんどなく、術後の平均入院期間は鼓室形成手術で3.85日と昨年よりも短縮しています。手術件数は県内でもトップレベルの実績を誇り、コロナ禍の影響はほとんど受けず、現在も多くの手術件数を維持しております。
慢性扁桃炎に対する口蓋扁桃摘出術は昨年度とほぼ同程度の74件であり、術後合併症のない早期退院を目指した安全な医療を提供しております。

皮膚科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0072 皮膚悪性腫瘍切除術(単純切除) 等 144 0.92 4.31 0.00 77.08
K0051 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)(長径2cm未満) 60 0.58 2.40 0.00 58.93
K013-21 全層植皮術(25cm2未満) 29 1.21 12.21 0.00 75.07
K0062 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外)(長径3cm以上6cm未満) 29 0.76 2.45 0.00 53.03
K0052 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)(長径2cm以上4cm未満) 28 0.86 1.54 0.00 59.43
乳腺科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K4763 乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術(腋窩部郭清を伴わない)) 114 1.51 7.86 0.88 62.35
K4765 乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術・胸筋切除を併施しない) 57 2.11 9.75 0.00 61.02
K4762 乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わない)) 51 1.75 2.02 0.00 60.02
K6113 抗悪性腫瘍剤静脈内持続注入用植込型カテーテル設置(頭頸部その他) 31 0.61 1.77 0.00 55.81
K4631 甲状腺悪性腫瘍手術(切除)(頸部外側区域郭清を伴わない) 14 1.50 5.07 0.00 54.79

乳房全摘術とセンチネルリンパ節生検
乳癌の手術は、術後の手の浮腫を防ぐため、近年腋窩リンパ節の郭清を極力なくす方向で行われています。このため、手術中に腋窩のリンパ節を1個だけ調べるセンチネルリンパ節生検が主流となっています。しかし、この術式はアイソトープの施設があることや病理の迅速診断が可能なことが条件で、大きな病院でないと実施できません。当院は、乳癌の全ての手術法に対応して手術が可能な施設です。このため、種々の術式が採用されていますが、腫瘍の大きさや場所に応じて、適切な術式を選択しています。

乳房温存手術
癌の広がりが少なく、場所も限定している場合乳房全体を切除することなく根治を目指すことが可能です。これが乳房温存手術です。
乳房温存手術後は、残った乳房組織に放射線照射を行うことが必要となります。放射線治療は、局所のみに照射するもので、全身への影響はほとんどありません。治療も1回数分で終了します。ただし、約3週間、連日の通院が必要となります。このように、追加治療の必要性も含めて手術術式は患者さんと相談しつつ決めています。術式により、再発や予後の差が出ず、かつ最大の治療効果を生じるように検討を重ね、患者さんに最新治療を提供しています。

遺伝子診断と予防的乳房切除術
遺伝性乳癌卵巣癌症候群は、BRCAという遺伝子に変異を来すことで乳癌や卵巣癌が高率に発生する家族性疾患です。若年発症や、家族歴のある乳癌患者さんにはBRCAという遺伝子の変異を保険適応で検査することができます。仮にこの遺伝子変異が陽性の乳癌患者さんで、対側乳房の乳がん発生を予防するために、予防的乳房切除術を希望される場合には当院当科はこの手術を施行できる施設認定を受けておりますので、実施は可能です。
また、形成外科の協力の元、乳房切除時に同時に再建を行うことも実施しています。

甲状腺・副甲状腺の手術
当科は内分泌外科―甲状腺、副甲状腺疾患を対象としています。甲状腺疾患は、バセドウ病や甲状腺癌を治療します。バセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて生じる疾患で、多くは内服治療で病勢はおさまりますが手術を要する場合もあります。近年は甲状腺全摘術が多く行われています。甲状腺癌は、組織型により予後や治療内容が変わります。腫瘍は、細胞診によりおおよその組織型がわかりますので、そのあとで治療方針を決定します。
副甲状腺機能亢進症は、近年増加傾向にあります。血中のカルシウムを測定する機会が増えたことが関係していると思います。この病気は、副甲状腺腺腫によりもたらされます。血液中のカルシウム濃度が高い状態を放置すると、尿管結石や腎機能障害、心筋梗塞や骨粗鬆症を引き起こします。これらの予防のためにも、治療は必要です。治療は、副甲状腺腺腫を摘出することが一番早く確実な方法ですが、頚部は多くの細かい神経や血管があるため、術後の合併症を防ぐ意味からも、できれば専門医の治療が必要です。当科では甲状腺専門医が診療していますので、治療は専門病院と同質の適切な治療を安全に行うことができます。わざわざ都内の専門病院へ通院される患者さんのご負担は減ることと思います。

脳神経外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K1692 頭蓋内腫瘍摘出術(その他) 57 5.93 34.11 15.79 63.37
K164-2 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 44 0.52 12.02 11.36 80.75
K1783 脳血管内手術(脳血管内ステント) 等 35 1.69 9.46 2.86 60.86
K1781 脳血管内手術(1箇所) 33 2.45 23.61 21.21 61.18
K609-2 経皮的頸動脈ステント留置術 29 0.97 8.34 6.90 72.34
心臓血管外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K555-22 経カテーテル弁置換術(経皮的大動脈弁置換術) 67 3.84 7.87 2.99 82.90
K5522 冠動脈、大動脈バイパス移植術(2吻合以上) 32 13.84 23.88 9.38 71.34
K5612ロ ステントグラフト内挿術(腹部大動脈) 30 3.47 5.67 0.00 77.83
K5551 弁置換術(1弁) 22 4.41 21.05 4.55 71.82
K5607 大動脈瘤切除術(腹部大動脈(その他)) 20 3.50 15.55 10.00 73.90

経カテーテル的大動脈弁置換術
経カテーテル的大動脈弁置換術は、大動脈弁狭窄症(弁が硬くなり狭くなった病気)に対して、カテーテルによって人工弁を植え込む方法です。胸を切らずに手術できるので、体への負担が少なく、高齢者(概ね80歳以上)や合併疾患を多く抱えた患者さんに適した方法です。当院は年間100例以上のカテーテル弁膜症手術を行っている埼玉県有数の経験豊富な施設です。

弁膜症手術
心臓弁膜症は心臓の弁が悪くなり、狭窄や閉鎖不全(逆流)を起こす疾患です。僧帽弁は弁形成術を、大動脈弁は人工弁置換術を行います。人工弁には、機械弁(金属でできた弁)と生体弁(ウシやブタの組織で作成された弁)があります。当院では8cmの右小開胸手術(MICS)や、切開せずカテーテルで治す僧帽弁手術も行ってます。各手術法は患者さんの年齢や状態、希望などを加味し医師と患者さんで相談の上選択します。

冠動脈バイパス術
冠動脈バイパス術は、心臓の筋肉を栄養する冠動脈に狭窄や閉塞が生じた場合に行う手術です。狭心症による胸痛などの症状を改善させ、心筋梗塞による突然死や心不全を予防する効果があります。当科では、患者さんの血管の状態や全身状態によって、人工心肺を使用する方法、使用しない方法、或いは左小開胸手術(MICS)等の手術術式の選択をしています。

ステントグラフト内挿術
大動脈が太く拡張した状態を大動脈瘤といい、大きくなると破裂して死に至ります。手術の方法には、人工血管に置換する方法(人工血管置換術)と、開胸や開腹することなくステント付きの人工血管をカテーテルで血管内に挿入する方法(ステントグラフト内挿術)があります。当院では大動脈瘤の形態や患者さんの年齢、全身状態などを考慮し、また患者さんとよく相談のうえ、手術方法の選択をしています。

小児外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K836 停留精巣固定術 106 0.44 1.00 0.00 2.27
K6335 鼠径ヘルニア手術 等 58 0.48 1.00 0.00 3.67
K8351 陰嚢水腫手術(鼠径部切開によるもの) 等 15 0.33 1.00 0.00 4.27
K6333 臍ヘルニア手術 等 14 0.14 1.00 0.00 2.79
K634 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側) 12 1.00 1.00 0.00 6.33
  1. 停留精巣固定術

    精巣が、お腹の中や、足の付け根に止まってしまい、おちんちんの袋(陰のう)まで落ちてこないことを停留精巣と言います。袋にあったり、触れなくなったりするのを、遊走精巣と言います。精巣は、妊娠7ヶ月でお腹の中から袋に下降します。しかし、生まれてすぐの赤ちゃんの5%に停留精巣が認められますが、7割は自然に治ります。生後6か月以降になると、自然に治ることは極端に少なくなります。停留精巣を放置すると、不妊症の原因となりますが、正しい位置に精巣を固定する手術を行うことで、危険性が半減します。遊走精巣は、精子を作る能力に異常が生じず、成長とともに自然に袋に収まってしまうことが多いのですが、まれに停留精巣となってしまうことがあるため定期的な診察が必要です。

    獨協医科大学埼玉医療センターでは、精巣に詳しい小児泌尿器科医や小児外科医が診療にあたり、生後6か月以降から、遅くとも2歳までには手術行います。術後も将来まで精巣の機能に問題がでないか経過を診ますので安心して受診してください。

  2. 鼠径ヘルニア手術

    小児外科で扱う疾患の中で最も多いもののひとつです。腹膜が足の付け根(鼠径部)に袋状になって突出しているところに、腸管や卵巣(女児)が脱出するため、同部位が膨らんで見えることで異常に気がつきます。脱出臓器が袋に入り込んで戻らなくなり(嵌頓)ねじれたりむくんだりすることによって、血流が少なくなり、臓器が壊死してしまうことがあるので、見つけたら早めの手術が必要とされます。

    小児鼠経ヘルニアの手術の原則は内鼠経輪の高さでのヘルニア嚢の高位結紮であり、鼠径部の皺に沿って約1~2cmの皮膚切開をおき、外腹斜筋腱膜を露出します。これを切開しヘルニア嚢を挙上し、嚢内に脱出臓器がないことを確認後、ヘルニア嚢を内鼠経輪の高さで穿刺結紮します。外腹斜筋腱膜、浅腹筋膜、皮下縫合後、皮膚を埋没縫合します。

  3. 陰嚢水腫手術

    陰嚢水腫は腹膜が足の付け根(鼠径部)に袋状になって突出しているところ(腹膜鞘状突起が残存)に液体が貯留するもので、小児の場合は腹腔内と交通する交通性陰嚢水腫がほとんどです。手術は鼠径ヘルニアと同様の手術を行います。小児の水腫は自然治癒も認められますので少なくとも1歳までは経過を観察します。

  4. 臍ヘルニア手術

    小児の臍ヘルニアは自然治癒する可能性が高く、腹筋の発達とともに1才頃までには約80%、2歳頃までには約90%が自然治癒するとされていますが、それ以降は自然治癒の可能性は少なく、手術を施行します。

    一般的には臍部の下縁を約半周ほど弧状切開し、皮下を剥離してヘルニア嚢に達した後、嚢を全周に剥離します。次に臍頂部直下でヘルニア嚢を横断し、腹直筋筋膜までヘルニア嚢を剥離後、嚢を切除します。しっかりした腹直筋筋膜を確認し、ヘルニア門を結紮閉鎖します。その後陥凹した臍にするため、臍頂部の皮下に残ったヘルニア嚢および皮下組織を切除し、臍頂部の真皮と腹直筋筋膜を縫合固定し臍窩を形成し、最後に皮膚を縫合します。

    臍窩が大きい場合や皮膚の余剰がある場合は、余剰皮膚を切除し、皮弁を形成し臍窩を作る方法などを施行します。

  5. 腹腔鏡下鼠経ヘルニア手術(両側)

    小児鼠経ヘルニアに対する腹腔鏡下ヘルニア手術では腹腔鏡下経皮的腹膜外ヘルニア閉鎖術が施行されます。本法は整容性に優れ、鼠経管構造を破壊せずに修復でき、さらに対側発生の予防も可能であり、急速に普及しています。従来法と比較し、再発率や安全性の面でも遜色がないという報告も増え、小児鼠経ヘルニアの標準手術となりつつあります。

呼吸器外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K514-23 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(肺葉切除又は1肺葉を超える) 等 86 2.17 10.21 1.16 71.33
K514-21 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(部分切除) 52 2.10 6.87 0.00 75.12
K5131 胸腔鏡下肺切除術(肺嚢胞手術(楔状部分切除)) 等 32 5.34 4.53 0.00 42.84
K514-22 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(区域切除) 等 25 1.68 6.40 0.00 70.36
K5143 肺悪性腫瘍手術(肺葉切除又は1肺葉を超える) 21 3.00 13.62 0.00 68.00

当科では、胸腔鏡を駆使した低侵襲な手術(単孔式/完全/ハイブリッド胸腔鏡、ロボット支援下手術)を積極的に行っています。疾患別年間手術数が最も多いのは肺の悪性腫瘍(原発性肺癌および転移性肺腫瘍)です。
そのうち約90%を胸腔鏡下手術に行っています。肺癌に対しては肺葉切除とリンパ節郭清を基本として行いますが、早期小型肺癌に対して残存肺機能の温存を考慮した区域切除等の縮小手術や多臓器浸潤を伴う進行癌への拡大手術も行っています。また、腫瘍の位置や進行度などにより安全性と確実性を担保するため胸腔鏡を補助的に使用した手術で対応しています。
自然気胸などの嚢胞性肺疾患に対して肺の一部を楔状に切除しています。気胸は多くの場合が緊急入院、胸腔ドレナージ後に臨時手術となります。そのため術前の入院期間が予定入院での手術よりも長くなっています。手術部拡大に伴い、近年では待機期間が1週間から5日に短縮されています。

腎臓内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K616-41 経皮的シャント拡張術・血栓除去術(初回) 等 74 1.00 1.76 1.35 69.64
K6121イ 末梢動静脈瘻造設術(内シャント造設術)(単純) 等 52 8.58 20.60 7.69 66.65
K616-42 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 1の実施後3月以内に実施する場合 等 10 0.10 1.40 0.00 73.70
K635-3 連続携行式腹膜灌流用カテーテル腹腔内留置術 - - - - -
K654 内視鏡的消化管止血術 - - - - -
形成外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K333 鼻骨骨折整復固定術 30 1.00 1.07 0.00 18.03
K0301 四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術(躯幹) 等 13 1.00 3.92 0.00 51.46
K227 眼窩骨折観血的手術(眼窩ブローアウト骨折手術を含む) 10 1.00 3.20 0.00 52.20
K427 頬骨骨折観血的整復術 - - - - -
K2193 眼瞼下垂症手術(その他) - - - - -
救急医療科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K386 気管切開術 27 10.52 27.67 77.78 68.33
K654 内視鏡的消化管止血術 - - - - -
K6153 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等)(その他) - - - - -
K6021 経皮的心肺補助法(初日) - - - - -
K1422 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(後方又は後側方固定) 等 - - - - -
リプロダクションセンター
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K838-22 精巣内精子採取術(顕微鏡) 77 0.01 1.00 0.00 34.71
K838-21 精巣内精子採取術(単純) 16 0.00 1.00 0.00 34.25
K834-3 顕微鏡下精索静脈瘤手術 - - - - -
- - - - - - -
- - - - - - -
その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)ファイルをダウンロード
DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 - -
異なる 67 0.30
180010 敗血症 同一 48 0.22
異なる 78 0.35
180035 その他の真菌感染症 同一 - -
異なる - -
180040 手術・処置等の合併症 同一 53 0.24
異なる 21 0.10

消化器外科の手術においては、胃や大腸、胆管には多くの細菌が存在しており、この様な臓器を切除する際にはこれらの菌がどうしても術野に漏れでてしまいます。この様なことから、手術後に菌による感染性の合併症が問題となります。真菌や弱毒菌など、通常では問題とならないような菌が手術後で体力が落ちている状況では感染性合併症を引き起こすことがあります。そのような症例の一部では、感染が制御出来ず、敗血症や血小板が下がってしまう播種性血管内凝固症候群に陥ってしまい、重症化する症例もあります。
この様な合併症をできる限り減らすため、多くの手法を取り入れています。まず、手術中の菌の散布を防止するため、できる限り、消化液や胆汁などが術野に広がらないような手術の工夫をしています。また、十分な量の洗浄によっての防止策も行っています。抗生剤は乱用すると耐性菌を作ってしまうため、薬剤部と共同で必要最低限で、最も効率が良いと思われるものを使用しています。また、栄養療法により、患者さんの免疫力を高め、感染に強くなるよう、手術前後の管理を行っています。この様な対策にもかかわらず、敗血症などの重症化した場合は、集中治療部、救急部と綿密な連携のもと、最新の医療技術をもちいてその治療に当たっています。

リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率ファイルをダウンロード
肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが
「中」以上の手術を施行した
退院患者数(分母)
分母のうち、肺血栓塞栓症の
予防対策が実施された患者数(分子)
リスクレベルが「中」以上の手術を
施行した患者の肺血栓塞栓症の
予防対策の実施率
2875 2668 92.80

肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが高い手術を施行した患者様に対し、抗凝固薬や弾性ストッキングを使用した予防策の実施率を表しています。
算出定義は以下の通りです。
分子:分母のうち、肺血栓塞栓症の予防対策が実施された患者数
分母:肺血栓塞栓症のリスクレベル「中」以上の手術を施行した退院患者数

血液培養2セット実施率ファイルをダウンロード
血液培養オーダー日数(分母) 血液培養オーダーが1日に
2件以上ある日数(分子)
血液培養2セット実施率
4473 4036 90.23

血液培養を2セット行う目的としては、採取部位の常在菌による汚染を鑑別することや、菌の検出率を高めることがあげられます。
算出定義は以下の通りです。
分子:血液培養オーダーが1日に2件以上ある日数
分母:血液培養オーダー日数

広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率ファイルをダウンロード
広域スペクトルの抗菌薬が
処方された退院患者数(分母)
分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日
までの間に細菌培養同定検査が
実施された患者数(分子)
広域スペクトル抗菌薬使用時の
細菌培養実施率
1826 1648 90.25

広域スペクトル抗菌薬とは、多くの細菌に対し効果のある薬剤のことをいいます。
しかし、この薬剤の乱用は耐性菌(抗生物質に対する抵抗性を持った細菌)を増加させる恐れがあり、抗菌薬を適正に使用するためには、どのような細菌が原因であるのかを調べることが重要です。
算出定義は以下の通りです。
分子:分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日までの間に細菌培養同定検査が実施された患者数
分母:広域スペクトルの抗菌薬が処方された退院患者数

更新履歴
2024/9/27
令和5年度病院指標更新