再生医学研究室

室長(准教授) 井上 健一
准教授 小尾 正太郎
講師 岸本 聡子
助教 相馬 良一
技術員 佐藤 幸江
技術員 鈴木 佐知子

概要

本研究室は、臓器の「スキマ」に存在する間質細胞の働きに注目しています。マクロファージや線維芽細胞などの間質細胞は、感染や臓器傷害の際に組織を守る重要な「はたらく細胞」です。しかし、その働きが制御を失うと、心不全における臓器線維化や、がんの遠隔転移などの重い病態を引き起こすことがあります。私たちは、こうした現象を細胞どうしの相互作用から生まれる「細胞社会のふるまい」として捉え、培養細胞や実験動物を用いた実験研究と、細胞の行動ルールを再現する計算機シミュレーションを組み合わせて解析しています。個々の細胞の性質だけでなく、細胞どうしの関係性から生まれる組織のダイナミクスを理解することで、線維化やがん転移の新しい治療戦略につながる原理の発見を目指しています。

活動および研究内容

1.コンピュータシミュレーションで解き明かす慢性炎症と臓器線維化の仕組み(科研費24K15733)

生体は傷害を受けると急性炎症を起こし、細胞外マトリクス(ECM)を再構成しながら組織を修復します。しかし、この過程がうまく制御されないと、慢性炎症や臓器線維化へと進行することがあります。本研究では、線維芽細胞やマクロファージなどの細胞がどのように相互作用して炎症や組織再構築を生み出すのかを、エージェントシミュレーションを用いて解析します。さらに、動物モデルの生体イメージングと組み合わせることで、組織傷害から慢性炎症・線維化へと移行する仕組みを明らかにし、病態理解の新しい理論的枠組みの構築を目指します。

2.進行大腸癌の再発のしくみを、細胞どうしの“対話”から解き明かす(科研費24K11811)

進行大腸癌では、手術や化学療法の後も肝転移として再発することがあります。本研究では、がん細胞だけでなく、その周囲にある線維芽細胞などの間質細胞に注目し、細胞どうしの“コミュニケーション”がどのように再発や転移に関わるのかを明らかにします。患者組織やマウスモデルを用いて、がん細胞が周囲の細胞をがんに協力的な状態へ変化させる過程を解析し、細胞の距離や配置といった空間情報も定量的に評価します。これにより、大腸癌肝転移の初期形成の理解を深め、再発予防や新しい治療法の開発につなげることを目指します。

3.心不全を引き起こす心臓線維化の新しい仕組みを解明(科研費25K11350)

心不全の進行には、心臓の組織が硬くなる「線維化」が重要な役割を果たします。本研究では、線維化を担う線維芽細胞が、心臓の拍動などによる機械的な刺激をどのように感知し、その結果として細胞内の分解装置であるリソソームの働きや細胞の性質がどのように変化するのかを明らかにします。これまでの研究で、心不全患者の心臓には特定の遺伝子を発現する特徴的な筋線維芽細胞が存在することが分かっています。本研究は、機械刺激と細胞内分解機構を結びつけて理解することで、心臓線維化の新しい分子メカニズムを解明し、将来的な心不全治療の新しい標的の発見につながることが期待されます。

4.心臓にかかる「力」が細胞の性質を変える仕組みを解明(科研費24K15712)

心不全の原因の一つに、心臓の組織が硬くなる「心臓線維化」があります。これは、線維芽細胞が変化して筋線維芽細胞となり、細胞外マトリックスを過剰に作り出すことで起こります。本研究では、血圧や拍動によって生じる伸展張力(引き伸ばされる力)が、線維芽細胞の分化をどのように制御するのかに着目します。特に、機械刺激を感知するイオンチャネルTRPM4の役割を解析し、細胞が力を感じて線維化を進める分子メカニズムを解明することを目指します。これにより、心臓線維化や心不全の新しい治療標的の発見につながることが期待されます。

担当教科

医学部
第1学年 数学
第2学年 PBLテュートリアルII、メディカル・プロフェッショナリズムII、医学研究実習Basic
大学院 基本医科学