生殖医学研究室

概要

ヒトも含めた哺乳動物では、精液中の精子は受精する能力を持たず、また卵巣から排卵されるのは卵ではなく減数分裂の途中の卵母細胞であるのが定説です。精液中の精子は卵管に移動し、受精の場である卵管膨大部に移動する間に受精する能力を得ていきます。この変化を受精能獲得と呼び、受精能獲得をした精子は頭部で先体反応と呼ばれる膜動輸送を、尾部では超活性化運動と呼ばれる特別な運動をするようになります。受精能獲得をした精子は卵母細胞と結合・融合し、精子の核などの成分が卵母細胞に入ると卵母細胞は減数分裂を再開し、卵になります。再開した減数分裂を卵母細胞が行っている間は、精子の核は隅っこで減数分裂が終わるのをおとなしく待っています。減数分裂が終わり卵になると卵の核と精子の核が融合し、受精が完了します。
生殖医学研究室ではこの哺乳動物の受精の仕組みについて、特に精子側の調節機構(すなわち受精能獲得が起こる仕組み)について超活性化運動を指標にして解析を行い、これを生殖医療に応用し少しでも生殖医療の成績を上げていくことを目指しています。超活性化運動を指標に使うのは、運動を観察することで精子が受精能獲得をしているかしていないかを判断することができ、非侵襲的であるため生殖医療への応用が容易である指標と考えているからです。精子受精能獲得は精子が卵管内に移動してから起こる変化であり、受精能獲得をしないと精子は卵母細胞にアクセスできないため、試験管内で受精を起こさせるためには如何に試験管内に卵管環境を再現するかがカギになります。多くの先人たちの研究成果によりイオンなどの基本的な組成は概ね解明されてきており、この成果に基づいて生殖医療が行われています。しかしまだまだ分からないことも多く、真に適切で生理的な条件で生殖医療が行われているかと言えば、まだそこまでは至っていません。それ以前に受精の仕組みそのものがまだ分からないことが多いというのが実際のところで、多くの研究者が日々研究を行っています。

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