お母さん、私も献体登録しましたヨ
岡川 俊子
母と育てたサンショやハナミズキが今年もたくさん花をつけました。リラも花が終わって勢いよく、ひとまわり大きくなりました。
人一倍わがままな母親は人一倍強情な娘と反発しあい、突っ張り合いながら、季節の移りかわりの中で春の摘草に桜吹雪のドライブ、そして紅葉狩りへ、冬の温泉と思い出をたくさん残して晩年を一緒に暮らしました。
献体登録した母のもとに送られてくる小冊子を私も読ませていただいていましたが、医者を目指す若者達が解剖実習に際し遺体を前にして、名も知らぬ人の生前に敬虔な想いをはせ、医学を究めようと真摯に実習にとりくむ様に感動してきました。
母が亡くなり、生前の希望どおり家族でお別れをして翌朝、獨協医科大学の解剖学教室の先生が母を迎えにきてくださいました。真情のこもった応対に、献体への不安は解消しました。死した後は、悲しみや苦しみや喜びさえもある筈はないと思いながら、母が淋しくないようにとの思いもあって私も献体登録しました。
まもなく「高齢者」の仲間入りする私は、行政の老人医療のあり方に疑問を持っています。しかし、それはそれとして誰もが心身ともに健康で長生きし、天寿を全うできる社会がくることを願い、医学の進歩のための一助となれることをうれしく思っています。母の顔を思いうかべながら私は献体の日まで悔いのない一生でありますように、健康にも気を配りながら、心豊かな日々を送っていきたいと思っています。