観光医療科

センター背景

獨協医科大学日光医療センターは世界遺産に登録されている「日光の社寺(日光東照宮、日光山輪王寺、日光二荒山神社)」を近隣に有し、さらに鬼怒川、川治、湯西川、川俣などの温泉郷もあり、本邦における最大級の風光明媚な観光資源に恵まれた地域にあり、観光客には必要不可欠な医療施設です。
診療体制は、電子カルテシステムにより行われており、また、バイプレーンアンギオ装置(2台)、64列MSCT、核磁気共鳴装置(1.5テスラ、2台)などの大型放射線機器を始め超音波診断装置、マンモグラフィー装置、骨密度測定装置等々のいずれも最新鋭装置が備わっています。この度、2010年(平成22年)4月から新たに観光医療科を開設し、観光医療に取り組むことになりました。

鬼怒川温泉

当センターに最も近い鬼怒川温泉は、現在では再生を目指し活気が戻りつつあります。2007年(平成19年)の宿泊客数が4年ぶりに前年を上回って200万人台を回復したほか、観光専門誌の温泉ランキングでは5年ぶりのベストテン入りをしています。新宿発着のJRと東武鉄道の相互乗り入れ線が開通したことにより鬼怒川温泉へのアクセスが整備されたことや2009年(平成21年)最終年度となる日光市の「藤原地区地域再生計画(32億7千万円)」による足湯広場、鬼怒楯岩大吊橋などの事業が完了したことに加えまして、地元事業者の努力により上昇傾向となったと推察されます。2018年春にはJRグループなどが本県で展開する大型観光企画『デスティネーションキャンペーン』が始まり、観光客が益々増加することが予想されます。また日光市は、台湾・台南市と観光友好都市提携(2009年(平成21年)1月)を行っております。

温泉ホテル利用の人間ドック

当センターにおける開設理念や基本方針に沿って、開設当初より地域への社会的貢献と保健医療の向上への貢献を柱に、地元企業(ホテル)との地域連携による健康医療の実践として「温泉ホテル宿泊型人間ドック」の実現に努力して参りました。

そして開院の翌年2007年(平成19年)1月から、鬼怒川温泉のホテルと提携した人間ドックを開始しました。折角の温泉宿泊ですので食事やアルコールの摂取が制限されないように、ドック初日に採血、採尿、そして胃の内視鏡検査などをして、2日目は身体測定や視力検査などをメニューとしています。従って初日の夜は温泉ホテルでゆっくりと温泉と食事が楽しめるといった内容としています。このため日頃の仕事を忘れさせ、リラックスできるプランとしました。

提携ホテル複数ヶ所と契約し、金曜日を除く全平日対応可能とし、県内外から多くのドック受診者を受け入れています。

日光・鬼怒川地域の観光資源と医療との連携は新しい産業を創設する仕組みであり、観光医療を通じてさらに地域の活性化に貢献できるものと考えています。

外国人向けの観光医療の現況

鬼怒川温泉がある日光市には近年、アジアからの観光客が増えています。また、日本の医療に対する信頼は厚いといわれています。

当センターでは、これまでに実施してきた温泉ホテルと提携した人間ドックの仕組みと、温泉ホテル側の外国人観光客の受け入れシステムを関連させ、主に中国語圏の富裕層をターゲットにした人間ドックと観光をパッケージ化した受け入れ態勢を整え、現在、中国などの旅行会社へ啓蒙活動を始めています。

国の施策では、訪日外国人4千万人時代の実現へ向け、さらなる訪日外国人旅行の促進に取り組んでいる状況にあります。海外からの患者さんを呼び込むインバウンド観光医療は国家収入源として注目されています。国土交通省観光庁ではネットワーク作り・障害の除去等受入体制整備を目的として課題の整備や今後の方向性の検討を行うべく、「インバウンド医療観光に関する研究会」を立ち上げています。また、経済産業省も、外国人が日本の医療機関で健診や治療を受ける「観光医療」を後押しするため、病院や旅行業者などによる実証調査を始めています。

これらは海外においても活発化しており、韓国においては健診などの医療サービスと、温泉やゴルフといったレジャーを組み合わせて外国人客の有力な誘致策として力を入れています。さらに医療法を改正して外国人の治療費割引を可能にするなど、政府が全面的に誘致を後押ししており、2008年は日本人を中心に約2万5千人を受け入れ、2012年にはこれを10万人規模に拡大しています。

今後の方針

当センターの今後の活動として、
  1. 現在地域企業と共同して取り進めている特定健診を中心とした企業検診活動と地域の保健衛生の向上を推し進めて地域の活性化を計ること
  2. 栃木県内外の健康に関心が深い個人・団体の方々に対して温泉宿泊と健診を組み合わせた人間ドックを啓蒙し、これまで以上に多くのドック受診者を受け入れること
  3. 中国語圏を中心に外国人富裕層をターゲットにした人間ドックあるいは人間ドックと観光をパッケージ化した健診の受け入れを推進すること
を検討しています。

これらの取り組みは日光・鬼怒川ブランドの向上に努め、さらには栃木県のイメージアップになるはずです。
一方、当センターは医科大学の付属病院であることから、学問的にこれまでの取り組みと総枠である観光医療を発展させて、終局的には健康増進というテーマに関与していきます。
栃木県は北に日光連山と那須連山を望み、多くの水資源を有している日本屈指の風光明媚な土地でありますし、首都圏とは近距離に位置しています。恵まれた観光資源を活用し、これに「医療」と「健康」の医学的検討を加えて、「健康増進」と「癒し」に役立てていくための診療・教育・研究を中心に活動していくことを目的として、2010年4月から獨協医科大学日光医療センターに「観光医療科」を設置しています。

獨協医科大学日光医療センター観光医療科における活動については、
  1. 企業の従業員健康増進プログラムの作成
  2. 医療サービスを付加した観光企画
  3. 予防医学としてのリハビリテーションプログラムの作成
等を考えています。特に医療サービスを付加した観光企画については、例えば医学的ハンディキャップがあるために旅行を楽しめない患者さんに医療サポートを観光に付加して旅行を楽しんでもらう。さらには、医学的ハンディキャップがある患者さんを介護している家族のために、温泉宿泊・観光を通しての癒しを提供できる企画も検討しています。
また、これらの科学的検証を行う上で、各方面の事業者や県内外の教育機関の方々、さらには全国の識者の研究促進の場として諸外国との交流を目的とした国際観光医療学会を立ち上げています。

最後に

獨協医科大学日光医療センターでは、医療施設として地域に貢献できる方策の一つとして「観光産業」との協同事業を取り上げ、国・県をはじめとする関係当局のご指導とご協力を仰ぎながら、日光・鬼怒川ブランドの向上に努め、栃木県のイメージアップにも貢献したいと考えています。各関係方面からの積極的なご参加をお待ち致しております。