先端医科学研究センター

センター長・教授 井川 健

概要

当センターでは、病態が解明されていない難病や治療法のない病気の基礎研究を行っています。

業務内容

再生医学研究室

患者生検、ヒトiPS細胞・培養細胞、実験モデル動物を用いて各種共同研究をしています。多変量データの機械学習や生体シュミュレーションなど、分野を横断したアプローチも開発しています。大学院生の学位研究の指導、生物統計学の講義・演習をはじめ、医学生のリサーチマインドを涵養する教育に従事しています。

認知・記憶研究室

高齢化社会を迎えた日本において、認知症への対策は今後最も重要な社会的責務の1つと考えられます。また統合失調症は、100人に1人が生涯を通じて罹患する可能性があり、療養後の認知機能の改善が社会復帰に重要であるとされています。本部門では、記憶の脳内メカニズムの本質的理解を通じて、認知症における病理診断が可能になる以前の早期診断の指標の確立に貢献できる知見や、統合失調症モデルマウスに特徴的な神経回路活動を把握することによって、症状改善への方策につながる知見を見出すことを目的として研究を進めています。

生体防御研究室

生体防御研究室では免疫細胞に焦点を当て、その機能を分子・細胞・個体レベルで理解し、これを病態解明や治療法開発へと応用することを目標としております。このため種々のノックアウトを使用すると同時に獨協医大にて開発されたトランジェニックでもノックアウトでもないマウスモデルやiPS細胞から分化誘導した免疫細胞を用いた研究を行っております。これらマウスや細胞を用いて学内・学外の研究室と共同で自己免疫疾患、感染症、がん、喘息、生活習慣病などの疾患モデルを構築して、免疫細胞の機能解明にあたっています。

スマート医療研究室

社会のデジタルイノベーション&トランスフォーメーションの進展を踏まえ、医療・福祉領域や、医療者等の教育領域におけるスマート化に関する新たな価値、事例を創造していくことを目標としています。
そのため、人工知能、ロボット、IoT、VR/AR等、種々の新たなテクノロジーを複合的に活用し、現状の様々な課題を解決するための取り組みや、今後の社会変革を見据えた新しい活用領域への展開を目指したアプローチを行っています。

生殖医学研究室

生殖医療の基礎研究ということで、精子側の受精機能に着目して研究をしています。ヒトを含めた哺乳動物の精子は精液中の精子は受精する能力を持たず、卵管内に移動していく中で受精できるようになります。この変化を受精能獲得と呼んでおり、どの様な仕組みでこの変化が起こるのかの解析を行い、その成果を生殖医療へ応用する事を目指しています。

分子病態研究室

疾患発症機構の解明、予防法/新規治療法の開発へブレークスルーをもたらすことを目指し、脳神経疾患をはじめとした様々な疾患組織検体から分子病態を追跡する「基礎臨床融合研究」を推進しています。認知症脳・精神疾患脳の患者死後脳検体をはじめ、心臓・血管・皮膚・消化器・整形外科・眼科など実臨床由来の疾患検体を解析しています。疾患の成因を蛋白質・糖質・脂質などの分子のレベルで解析することによって、疾患の根幹をなす分子の異常を「分子病態」としてとらえ、それらの異常がどの様な機構で細胞や組織に影響しているのかを研究しています。解剖学・生化学などの基礎医学分野のみならず、分析化学、生物物理学など複合領域に亘る最先端技術を統合的に用い、疾患組織を解析しています。国内外の多くの研究機関、臨床教室と連携し、多くの研究医・大学院生・学部学生とともに、疾患から分子病態に迫る研究・卒後/学部教育を実施しています。

放射線衛生学研究室

チェルノブイリ原発事故により、汚染された地域に暮らす人々の食事や内部被ばく調査を通じ、低線量被ばく疾病との関係を探っています。また、チェルノブイリと福島第一原子力発電所の事故により、精神的ストレスによる心理的影響に関しても国内外の専門家と協力し合い調査を進めています。この結果を福島の人々に応用すべく、福島分室を中心に県民の健康管理に努めています。