趣旨
21世紀の医学・医療がさらに発展していくために、次世代の優れた人材を育成していくのは大切なことであり、それは獨協医科大学の使命でもあります。本学では開学以来の一般入学試験に加えて、1981(昭和56)年度から指定校制推薦入学試験、1998(平成10)年度から学士編入学試験、2002(平成14)年度から大学入試センター利用入学試験(2025(令和7)年度廃止)を導入しており、多様な人材構成によるクラスの活性化を通して学習効率の向上を目指してきました。2004(平成16)年度から、新しい入学者選抜方式として従来の学士編入学試験を発展的に解消して本選抜を導入した目的は、他分野において豊富な経験や才能を発揮した人材をクラスに迎え入れて、お互いに協力し、理解し、そして切磋琢磨しあうことで生まれてくる相互信頼関係を育むことにあります。総合型選抜入学者は、他分野で得た経験を基にして、この相互信頼関係を育む核となって、リーダーシップを発揮しながら、お互いの自己学習能力を高めあっていくことが期待されます。
総合型選抜は、一般に「学力よりもそれ以外の能力を重視する入学者選抜」として捉えられがちですが、医学部においてはたゆまなく進歩する膨大な医学の知識・技能・態度を効率よく習得することが求められています。さらに、卒業後も信頼される医師として活躍するためには、生涯に渡って自己研鑽を続けていくことが必要です。したがって、医学部における総合型選抜入学者はそれに対応できるだけの学習能力をすでに持っていることが大前提になります。私達が考える「学力」とは、「学んだ力」「学ぶ力」「学ぼうとする力」という三つの力の総和であると考えています。この三つの力をバランスよく身につけるためには、「学ぶ意味」をよく理解している必要があります。
本学が総合型選抜入学者に求める資質として、「Compassionate」「Competent」「Communicate」という「三つのC」が必要だと考えています。「Compassionate」とは、人の痛みや苦しみを敏感に察知して、それを心からやわらげたいと思える人間性を持つことです。「Competent」とは、自分の持っている知識を総動員して目の前の困難を切り開く能力を持つことです。医学の進歩に対して自己学習を怠らず、自分自身を常に内省し、改善点を見つけてはそれを直していくという不断の努力が要求されます。「Communicate」とは、患者だけではなく、同僚医療人や世界の医学文献から正確な情報収集を行い、それを整理して価値判断を下し、目の前の患者に最適の治療を提供する能力を持つことです。
総合型選抜入学者は卒業後、医療、研究、後進の育成など幅広い分野で活躍していただき、本学発展の原動力となることが期待されています。したがって、総合型選抜入学者に求められる最も重要なことは、獨協医科大学がどういう大学であるかをよく理解した上で、なぜ本学の一員になりたいのかについて明確な意識を持っていることです。