部長 |
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戸田 宏一 |
臨床工学部
臨床工学部の特徴
臨床工学部は、部長(心臓血管外科教授)を筆頭に臨床工学技士25名で構成し、埼玉医療センターと越谷クリニックの業務量にあわせ人員をローテーションし業務を行っています。我々は、医療チームの一員として生命維持管理装置の操作、管理の担当者として緊急手術や医療機器のトラブル、災害に対応するため365日24時間体制にて業務を行っています。常に医療事故のないよう安全に心掛け、他の医療従事者と協力しチーム医療を推進することを理念に掲げ、患者さんへのサービスに専念し業務に取り組んでいます。
業務内容
心臓手術において、臨床工学技士は医師の指示のもと人工心肺装置の操作を担当しています。人工心肺装置の操作は、2人の臨床工学技士で対応し、年間120例程度の症例をトラブルなく安全に行っています。また、超音波血流計、自己血回収装置、心筋焼却装置などの周辺機器の操作も行います。
カテーテルによる弁置換術(TAVI)ではハートチームの一員として、患者さんの入室から退室まで安全に治療が施行できるように様々な業務を行っています。業務内容は急変時の体外循環準備や操作と清潔野で行うクリンプ作業、ポリグラフによる圧解析やペースメーカ設定などを担当しています。
手術室では多数の医療機器を使用しているので、それらの装置の保守点検を計画的に実施しています。また、脳神経外科手術や耳鼻科手術で使用するナビゲーションシステムの操作や整形外科などの手術中の自己血回収装置の操作も依頼があれば施行しています。また、手術支援ロボットda Vinciやhinotoriでの手術件数も増加しており、その管理や準備を行い円滑な手術施行に貢献しています。
心臓カテーテル検査において臨床工学技士は、循環動態の監視や治療装置の準備を担当しています。また、循環動態が不安定な場合は心臓機能を補助する循環補助装置(IABP、ECMO、IMPELLA)や体外式ペースメーカを挿入するので、それらの生命維持管理装置の操作も行っています。最近は、血管造影と併用して各種診断装置(IVUS・FFR・OCT)を用いての血管治療が標準となっているため、それらの装置の操作も担っています。
電気生理学検査やアブレーション治療における業務は、刺激装置や3Dマッピングシステムなどの操作、不整脈の監視や記録を行っています。また、クライオバルーンやホットバルーンを用いたアブレーションも増加しており、それらのデバイスでの治療においても安全に実施できる体制を確立しています。
ペースメーカや植込み型除細動器の植え込みや交換時は安全に手術が行えるよう周辺機器や本体の準備を行い、プログラマを操作して閾値測定や本体設定を行っています。植え込みや交換後はペースメーカ外来や遠隔モニタリングにて適切に動作しているか、医師と協力しながら定期的にチェックを行っています。
入院患者専用の透析施設である透析センターは、透析部門システムを越谷クリニックと連携させ安全に治療を行っています。業務は人工透析装置の準備・操作・保守管理やRO水作製装置・透析液作製供給装置の保守を行っています。また、透析液清浄化への取り組みや透析部門システム運営などの業務も担っています。また、穿刺用エコー装置を導入し穿刺技術向上や災害拠点病院として井水導入や災害対策、腹膜透析装置の管理にも取り組んでいます。
腎移植や肝移植に伴う抗A抗B抗体の除去および抗リンパ球抗体の除去や急性拒絶反応の治療を目的に血漿交換や二重濾過血漿交換を行っています。また、潰瘍性大腸炎やクローン病に伴う治療として顆粒球吸着、難治性腹水症に伴う治療として腹水濃縮も行っています。また、自家末梢血幹細胞移植にともなう造血細胞採取を臨床検査部と協力し行っています。
越谷クリニックは外来専用の透析施設として透析部門システムを用いて100名前後の患者様の治療を安全に行っています。業務は人工透析装置の準備・操作・保守管理やRO水作製装置・透析液作製供給装置の保守も行っています。また、透析液の徹底した水質管理と患者さんのADLや病態にあわせたOn-Line HDFの管理を行っています。また、運動機能低下防止やサルコペニア防止を目的に腎臓リハビリテーションにも取り組み、患者さんの身体機能の低下予防に努めています。
乳児から成人までを対象とした様々な人工呼吸器や吸入療法機器の準備や呼吸回路組み立てを行っています。人工呼吸器によるスムーズな呼吸や無理のない離脱が行えるように、人工呼吸器設定や使用状況の点検も毎日行っています。また、呼吸ケアチーム(RST)の一員として安全管理状況や人工呼吸器合併症予防対策の確認を行い使用者への提案や提言をしています。
ICU、ERICU、HCU、SCU、NICUでは患者さんの状態により様々な生命維持管理装置(ECMO・IABP・CHDFなど)やモニタリングが必要になり、医師からの依頼にあわせ装置の準備を行います。また、難治性の重症心不全症例に対して補助人工心臓治療を行う場合もあるので、補助人工心臓の管理や教育も行っています。
院内にある約1,500台の医療機器は医療機器管理ソフトにてバーコードを割り振り、計画的に点検を施行し購入から廃棄までトラブルがないよう中央管理しています。使用後は看護補助者2名と協力し医療機器の回収や清拭を行い、専用測定装置を用いて医療機器の異常や性能劣化がないか点検を行っています。点検後、問題ない医療機器は病棟からの依頼に合わせ貸出や運搬を行っています。
内視鏡センターなどで管理している院内にある各種スコープや内視鏡システムの管理を機器管理ソフトにて行っています。また、内視鏡センターで使用する医療機器の操作、内視鏡センター以外で行う検査治療の準備や補助を行っています。
関連学会認定による認定士取得や最新の治療法や装置への対応のため、学会や研修会に参加し知識や技術の習得に努めています。また、当院で検討した技術や経験を、さまざまな学術大会等で発表や報告も行っています。
臨床工学技士養成校より実習の依頼あれば、学生の受け入れを行っています。また、他病院の臨床工学技士の研修や企業からの研修も依頼があれば受け入れています。
臨床工学部は医療機器安全管理責任者として病院内で運用している医療機器の安全使用のために、病院内のすべての職種対象に正しい操作や管理方法の習得を目的に勉強会を適宜開催しています。
業務実績
人工心肺症例数 | 110例 |
TAVI・Mitral Clip | 129例 |
自己血回収業務 | 490例 |
ナビゲーション業務 | 86例 |
da Vinci・hinotori | 494例 |
透折センター透折施行数 | 3,687例 |
透折センター外透折施行数 | 286例 |
越谷クリニック透折施行数 | 14,655例 |
CHDF 症例(患者数) | 86人 |
DHP・アフェレシス | 165例 |
造血細胞採取 | 16例 |
CAG | 557例 |
PCI | 178例 |
PPI | 69例 |
EPS | 19例 |
ABL | 390例 |
デバイス植え込み交換症例数 | 150例 |
デバイスチェック | 1,652回 |
ECMO 症例数 | 57例 |
IMPELLA・補助人工心臓症例数 | 10例 |
IABP 症例数 | 47例 |
人工呼吸器点検数 | 11,998回 |
ME 機器点検実施数 | 47,592回 |
勉強会開催回数 | 51回 |
学会等発表回数 | 9演題 |
学生実習受け入れ数 | 5人 |