目的
リハビリテーション科専門医を育成するために作成された研修プログラムです。
都道府県別対10万人あたりの医師数は全国平均が256.6人(2020/12/31;厚生労働省発表データ)です。リハビリテーション科専門医の医師数は全国平均2.50人(2023/6/1;日本リハビリテーション医学会)です。リハビリテーション科医は全医師の10分の1程度しかいません。それでは、そもそもリハビリテーション医学・医療の専門性とは何でしょうか?リハビリテーション治療は基本的には“運動療法”と“高次脳機能療法”です。運動療法で鍛えられるのは全身持久力と各部位の筋力、筋持久力可能域ですが、全身の様々な生理学的機能が関わります(神経、摂食・消化、代謝、体温)。運動療法の目的は患者様の日常生活動作を改善させ、最終的にQOLを改善させることです。入院時より体力が向上していれば最高です。そしてこれが急性期、回復期、生活期と切れ間無く続きます。しかし、これが必要な患者様はそれぞれに病態が異なり、社会背景も異なります。患者様の状態、体力に合わせた強度、頻度を適切に選び実施する必要があります。全身を診る、社会背景も診るリハビリテーション医学・医療がカバーするものは非常に広いです。さらに、リハビリテーション医療は患者様を含めたチーム医療です。療法士のみならず、全診療科医師や看護師、栄養士、ソーシャルワーカー、ケアマネージャー、時には歯科医との連携が必要です。急性期から、回復期、生活期とどのフェーズでもです。従って、コミュニケーションを積極的にとっていく必要があります。このようなものがリハビリテーション医学・医療の専門性であり、他科で掲げるSpecialistという意味には相反するかもしれません。
政府は国民の健康寿命延伸のための施策を進めています。医療では急性期医療におけるリハビリテーション治療の重要性をふまえながら回復期病床を増やし、今後、病院では診られなくなることを想定し、在宅医療の拡大を進めています。その一方で、患者様が住み慣れた地域で安心して過ごせるように地域包括ケアも導入し、これに関する病床数も増えています。地域包括ケアでは小規模ですが、急性期、回復期、生活期のリハビリテーション医療すべてが含まれます。最近では、がん治療など、分野によっては運動療法が「治療」そのものになりつつあります。求められることも各々フェーズにより異なり、患者様ごとにも変わります。どのようなフェーズにおいても患者様の健康寿命延伸のためにリハビリテーション科医が果たす役割は大きいです。
本カリキュラムには首都圏の大学病院を始め、回復期病院、通所・訪問リハビリテーション支援を学べる施設が含まれています。どんなフェーズでも、どんな患者様に対しても、リハビリテーション科専門医として必要な診療手技やコミュニケーション能力の習得、さらに変わらずに持たなければならないspiritをぜひ感じて欲しいと思います。